通信販売の返品ルールが変更された
![]() |
【オーナー】
私はネットショップオーナーです。特定取引法が改正されたという話をきいたのですが、私に関係のあることですか?
【弁護士】
はい。関係あります。ネットショップを経営されている方は、いわゆる通信販売をおこなっている方が多いと思います。通信販売には、現在、特商取引法の適用があります。ですから、特定商取引法が改正されると、ネットショップの経営者の方へ影響が大きいですよ。
【オーナー】
そうなんですね。では、私も勉強しないといけませんね。その改正というのは、いつから効力が発生するのですか?
【弁護士】
特定商取引法の改正は、2008年にされています。法律の施行、つまり、法律の効力が発生
するのは、2009年12月1日です。すから、すでに効力は発生しています。
【オーナー】
あ、そうなんですか。私はまだ、対応してないな。はやく対応しないといけませんね。
【弁護士】
ぜひ、対応することをおすすめします。
【オーナー】
どのような点に、一番気をつけないといけませんか?
【弁護士】
ずばり、ネットショップオーナーに関係がるのは、「返品ルール」という制度です。
これだけは、おさえてください。お店の経営に、直接に影響します。特定商取引法第15条の2です。
【オーナー】
「返品ルール」というのは、どういう制度ですか?クーリングオフというのとは違うんですか?通信販売には、クーリングオフは、いままではかったと思いますが...
【弁護士】
オーナーさんは、通信販売について、とも興味をおもちで、ご勉強されているのですね。順番にご説明します。
【オーナー】
おねがいします。
【弁護士】
まず、今回の法改正で導入された「返品ール」は、クーリングオフとは異なります。
【オーナー】
どういう点が異なるのですか?
【弁護士】
ええ、クーリングというのは、売買取引が立して、書面をお客さまに渡してから、8日間と、取引によっては、20日間、お客さまが無条件で引を解除できる、そういうものですね。
【オーナー】
そうです。
【弁護士】
商品に欠陥がなくても無条件で解除できるというものですよね。
【オーナー】
そうです。欠陥がないのに解除されるのは気持のいいものではありませんが、法律で決まっていることなんで、しょうがないと思っています。
【弁護士】
今回の「返品ルール」というのは、返品についてのルールを自主的に決めなさい、というものです。ですから、かならずしも、返品しないといけなわけではありません。
【オーナー】
自主的に決めてよいのですか?では、私は、欠陥のない商品の返品には応じたくないで、欠陥のない商品の返品には応じません、としもいいのですか?
【弁護士】
そのとおりです。
【オーナー】
えー、でも、それだったら、返品しない方がトクだから、みんな、そうするんじゃないんですか?
【弁護士】
いえいえ、かならずしも、そうは言い切れないと思います。というのは、返品ルールは、お客さまが、かんたんにわかる場所に明示しないといけないからです。
【オーナー】
えー、ようするに、サイトに「返品に応じません」と、はっきりと書かないといけないわけですか。
【弁護士】
そのとおりです。お客さまが、商品を買うたびに確認できる場所に、わかりやすく書かないといけないのです。
【オーナー】
うーん、お客さんが明確に見るとなると、ちょっと、あれかなあ、商品の売上に影響してくるのかなあ...
【弁護士】
オーナーさん、そう、まさに、そこがポイントなんです。
「欠陥がなくても、未開封の商品なら8日以内は返品可」
と書いてあるお店と、
「欠陥のない商品の返品はお断り」
と書いてあるお店がならんでいたら、オーナーさんだったら、どっちのショップで買いますか?
【オーナー】
自分が、お客さんだったら、ですか...まあ、自分が買うとなれば、返品できるお店でしょうね。
実際、写真の色合いと商品の本当の色合いがちがうこととか、よくあるし、とくに、高額な商品だったら、本物みてから買いたい、というのがホンネですね。
欠陥というのではなくて、フィーリングが合わない、ということは、たしかに、ないことはないですわ。
【弁護士】
そうですよね。私も、ついこの間、ちょっと値の張る高級ペンを買ったのですが、買うまでは、
ちょっと、ドキドキしましたね。イタリア製だったんですが、デザインは、すごく素敵なんですよ。
ところが、ショップの写真によっては、ペンの軸の部分の写真の色合いがちがって見えるんですよ。
赤色に見えたり、オレンジ色に見えたり。私は、オレンジ色だったら買いたいと思っていたんですが、
赤色だったら買いたくなかったんですよね。
本当は、店舗で現物を確認したかったんですが、輸入品だったんで、
百貨店でも現物を置いてなかったんです。ですので、迷いがあったんですが、えいやっ、と思って買いましたね。
でも、もし、無条件で返品に応じてくれるショップがあったら、多少高くても、そこで買ったでしょうね。
色合いを確認できますから。
【オーナー】
そうすると、返品ルールをどうするのか、というのは、販売戦略の中で考えていかないといけない問題ということですね。
【弁護士】
オーナーさん、まさに、そのとおりです。
単純に、返品に応じない方が得だという問題ではないと思うのです。
返品に応じるなら、それを明確に書いて、ウリにした方がよいのかもしれないのです。
【オーナー】
うーむ...ところで、ちょっと、アレかもしれませんが、
いっそのこと、返品についてなにも書かないと、どうなるんですか?
【弁護士】
なにも返品ルールを書いていない場合には、
法律によって、商品が、お客さまのところにとどいてから8日間、
無条件での返品に応じないといけなくなりました。
今回の改正で、あたらしくつくられた制度です。
【オーナー】
そうすると、自分で返品のルールを決めて、サイトに返品ルールを書けば、自分のルールが優先される。
一方、なにも書かないと、法律で強制的に無条件返品ということになるわけですか。
【弁護士】
そのとおりです。
返品に応じないなら、欠陥のない商品については返品に応じません、というルールでもよいですから、まずは、書くことです。
なにも書いてないと、不利になります。
【オーナー】
わかりました。
では、私は、お客さまのところに商品が届いてから、5日以内の返品請求には応じますが、
その後は、商品に欠陥がある場合だけ返品に応じる、ということにしたいです。
その場合は、返品ルールをどう書いたらいいでしょうか。
【弁護士】
「商品に欠陥がない場合であっても、引渡し後5日間にかぎり返品に応じます。
この場合には送料はお客さま負担でお願いします。商品に欠陥がある場合には送料を当方負担にて返品に応じています」
と書くのがよいでしょう。
【オーナー】
わかりました。検討します。
では、欠陥のない商品の返品には応じたくない場合には、どうしたらよいですか?
【弁護士】
「商品に欠陥がある場合には返品を受け付けますが、商品に欠陥がない場合には返品に応じません」
と書くのが、わかりやすくて、よいと思います。
【オーナー】
わかりました。ところで、オークションのサイトなどで、
以前に、「ノークレーム・ノーリターン」という表記をみたことがあるのですが、
これでもいいんでしょうか。
【弁護士】
今回の改正では、「ノークレーム・ノーリターン」では、不適切ということになっています。
というのは、「ノークレーム・ノーリターン」というのは、商品に欠陥があっても返品不可、
という意味になってしまいます。
これは、消費者契約法の8条1項1号の「責任の全部免除」になってしまいますので、
法的には無効です。
欠陥のある商品だったら、やはり、返品に応じないといけませんよ。
【オーナー】
いや、もちろん、ぼくも、欠陥があるなら、当然、返品には応じるつもりではありますけどね。
まあ、サイトへの書き方によっては、自分が思ったことと、
ちがうようにとられる、ということもある、ということですね。
いまは、サイトに書く内容や表現は自分で勉強して管理しないといけないのですね。
【弁護士】
まさに、そのとおりだと思います。インターネット時代になって、
それまで、広告代理店にまかせていたような広告を、私たちは、自分でつくることができるようになりました。
こういう自由があたえられたことについては、よろこぶべきことだと思います。
でも、自由がある、ということは、責任がある、ということでもあります。
法律に違反するような悪いことをインターネット上で書いたら、犯罪になってしまうことだってあります。
自動車と同じで、自動車は便利なものだけど、自動車で事故を起こしたら重い責任が発生します。
そういうことだと思います。
ネットショップ・オーナーの方は、法律をよく知ったうえでサイトに文章を書きましょう。
【オーナー】
了解です。
![]() |