極端に単価の高い商材がネットで売れるようになってきている
2015年07月01日
今後のネット販売の方向性を示唆する2つのニュースが今日報道されました。『アマゾンジャパン(東京・目黒)は30日、積水ハウスなどと組みリフォームサービスの販売を始めた。キッチンや浴室、トイレなど計5千種類以上を扱い、価格は商品代に交換や取り付けなどの工事費を含めて定額で表示する。一般のリフォームサービスで手間がかかる見積もり作業などがなく、予算に応じてネットで手軽に申し込める。』(2015/7/1 日本経済新聞 朝刊)
『パナソニックは7月から個人向けの中古住宅の仲介事業を始める。中古物件ごとにリフォームの提案を組み合わせて紹介するウェブサイトを立ち上げる。同社の強みであるシステムキッチンや浴室といった住設機器などの情報も提供し、顧客ニーズにきめ細かく対応する。』(2015/7/1 日本経済新聞 朝刊)
の2つの記事です。
20年近く前に始まったネット販売の世界ではアマゾンが書籍やCD等の販売を始め、低単価商材からスタートしました。
当時はネットで商品を購入するのは騙されるリスクが高くお金を払っても商品が届かない等のトラブルがあり、消費者はネットで商品を購入することに躊躇していました。
テレビや新聞などのオールドメディアはネットの危険性を大きく報道してそうした恐怖は増幅されていきました。
しかし、徐々にネットでの商品購入に慣れてきた消費者は時間と共により高い単価の商品を購入するようになりました。
消費者にとって最も高い買い物は何でしょうか?それは恐らく自動車や住宅ではないでしょうか?
今年の4月1日に「BMW、アマゾンで新車 電気自動車「i3」、潜在需要を掘り起こし」(日本経済新聞 朝刊)というニュースが報道されました。
https://www.web-planners.net/blog/archives/000031.html
新車、それも価格が高い外車を物販サイトでいきなり販売するこの動きもネット商材の高単価化の流れにあるものです。
そして今回のアマゾン、パナソニック等のリフォームという住宅関連商材という高額な商材をネットで販売するという動きです。
これらの高額商材に関する報道には2つの重要なポイントがあると思います。
(1)大手企業のネット販売市場の参入
(2)高い商品を売るための消費者視点の工夫
の2つです。
(1)大手企業のネット販売市場の参入
これは最近特に強まっている傾向ですが、以前はネットを使わなくても一定の売上と成長をすることが出来てきた大手企業が、少子高齢化、消費税増税をきっかけにした消費不況、大手企業や公務員以外の所得の減少等によりそれまでのリアルの世界だけではその売上と成長を維持出来なくなってきたというトレンドです。
一時的に東京オリンピックやアベノミクスなどによる景気刺激により息抜きは出来たとしても長期トレンドとしては国内経済は縮小に向かっています。
そうした中、大手企業が生きるために出来ることは海外市場進出の他にはネット市場進出くらいしか選択肢はなくなってきています。
その結果、それまで大手企業がほとんど存在感の無かったネット市場において近年のモバイル時代をきっかけに本格的なネット市場への参入が起きてきています。以前はパソコンを持っている少数の人達だけが販売先で魅力はあまりなかったネット市場が子供からお年寄りまでが個人的に所有するスマートフォンやタブレット等のモバイル機器の普及とそのネット接続費の下落により激増した結果、リアル市場とほどんと同じ規模のとても魅力的なマーケットになりました。
このトレンドがダイレクトに影響を及ぼすのがこれまで比較的平和にネット市場で自社の立ち位置を築き上げてきた中小企業、個人企業です。
(2)高い商品を売るための消費者視点の工夫
アマゾンジャパンと今回提携した積水ハウスはこれまで不透明だった総額のリフォーム費用を明確化して総費用を明確に表示するようにしました。
その結果、隠れた費用の無い明瞭会計による住宅リフォームの申し込みが可能になり、消費者は安心して住宅リフォームをネットで申し込めるようになりました。
これは高い商品でも消費者がネットで申し込みがしやすくするための工夫です。
また、外車をアマゾンで販売するBMWはいきなりサイト上で契約を消費者に迫るのではなく、『購入者にはBMWのコールセンターから連絡が入り、購入に伴う正式な書類をやりとりする。支払いは5年契約のローンやリースを選ぶ。ローンの場合は頭金の99万円のみアマゾンが回収し、その後の支払いはBMW関連会社などと進める』(2015/4/1 日経新聞電子版)というように申し込みがしやすくなるための配慮がされています。
これまでネットでは高い商品は売れないと諦めてきた企業の方は、諦めるのではなくこうした工夫を参考にして消費者がより気軽にアクションを起こせる配慮を考案すべきです。
確かに、大手企業が相次いでネット市場に本格参入するのはこれまで平和にネット販売をやってきた中小・個人企業には厳しい現実です。
しかし、これをきっかけに売上の維持、拡大のために思い切って高単価の商材を取り扱って見てはどうでしょうか?
10万円の商品を100個売れば1000万円の売上ですが、同じ売上が500万円のもの2個売れば達成できます。
人員も、設備も大手企業に比べれば限られている中小・個人企業であればこそ少数の顧客により深いサービスを提供することによって客単価が飛躍的に伸びる可能性があります。
そして、それを可能にするためには消費者の心理的抵抗、心理的負担を軽減する販売方法と、経済的負担を軽減するためのローンの活用や助成金の取得のサポート等の工夫が必要です。
インターネットというものが存在する限り、ネット販売の世界に終わりはなく、信じられないスピードで変化が起きます。
このネット商材の高単価化というトレンドを座って見過ごすのではなく、自社の飛躍のチャンスにするためにも一度考えて見て下さい。
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