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定額制の音楽配信サービスの登場が私達にとって何を意味するのか?
2015年06月13日
今週は音楽配信サービスに関するニュースが立て続けにありました。『スマートフォン(スマホ)向け無料対話アプリのLINE(東京・渋谷)が11日、定額制の音楽配信サービス「LINEミュージック」を始めた。楽曲を友人らと共有し、一緒に楽しめる。定額制音楽配信は米アップルも参入を表明しているが、対話アプリの「つながり」を前面に出して勝負する。料金は30日間聴き放題のプランで基本が1000円』(日本経済新聞2015/6/12)
『米アップルが現地時間8日にサンフランシスコで開催した開発者向け会議の基調講演で注目を集めたのは、事前に噂のあった定額制の音楽聞き放題配信サービス「アップルミュージック」を正式発表したことだ。これまでCDへの依存度が高く、海外で主流となりつつある定額配信サービスに乗り遅れていた日本市場にも、アップルミュージックの登場をきっかけに本格的な「定額制音楽聞き放題」時代が到来しそうだ。』(日本経済新聞2015/6/10)
『音楽放送大手のUSENはレコチョクと提携し、飲食店や美容室向けに定額制の音楽配信サービスを7月に始める。数百万曲から選んだ好きな楽曲をいつでもBGMとして再生できる。利用料は月3千円程度の見込みだ。CDやスマートフォン(スマホ)の音源を違法に利用するケースが多く、手軽に始められる仕組みで正規利用への切り替えを促す。』(日本経済新聞2015/6/11)
『音楽配信サービスの英Spotifyは現地時間2015年6月10日、有料サービス会員が2000万人を突破したと発表した。無料サービスを含めたアクティブユーザーは7500万人以上にのぼる。有料会員が1000万人に達したのは、サービス立ち上げから5年半後の2014年5月末だった。「さらに1000万人増えるのにわずか1年しかかからなかった」と、同社は急成長を強調した。』(ITpro 2015年6月11日)
これらのニュースは私達サイト運営者にどのような意味があるのでしょうか?
(1)スマートフォンのホーム画面の場所取り競争が激化する
アップル、LINEなどが提供する定額制の音楽配信サービスをするためにはスマートフォンにアプリをダウンロードして利用することになります。
すでにスマートフォンユーザーのホーム画面にはFacebookやTwitterなどたくさんのアプリがインストールされていますがホーム画面の第一画面に残されるアプリはユーザーが最も頻繁に使うアプリです。使われなくなるアプリはスワイプしないと表示されない第二画面、第三画面に移動することになります。
これはあたかもGoogleの検索結果ページの1ページ目に表示されるための競争を思い起こされます。
ホーム画面争奪戦はすでに始まっています。すでにインストールされているアプリを利用して集客するか、独自アプリを自ら開発して他のアプリに競争を挑まない限りスマートフォンユーザーを新規客にすることは困難になります。
Googleが2013年に発表したユーザー調査によるとスマートフォンユーザーに最も人気があるコンテンツの1つがエンターテイメント系のコンテンツだそうです。
そうした系統のコンテンツを提供していない企業はそのセグメントから集客するためにはアプリ広告を買う羽目になるか、高額な掲載料金を払わざるを得なくなるはずです。
(2)スマートフォンなどで音楽販売をしている企業の業績に悪影響を与える
もう一つの影響は、これまでオンラインで楽曲を1曲、1曲売ってきたiTunes Store等の楽曲販売サービスの売上は減少するか、将来的にはほとんどなくなってしまう可能性があります。
しかし、これはそうしたサービスがかつて街のCDショップから売上を奪い閉店に追い込んだ報いが来るとも言えるはずです。ビジネスの世界でも「自分がしたことはいつか自分に帰ってくる」という因果律があります。
しかし、その因果律に立ち向かう方法もあります。それは自分が作ったビジネスのエコシステムを自分で破壊して新しいものを自らが創造するというものです。
街のCDショップから売上を奪い、iTunes Storeを創造したアップルが自らの手でせっかく今繁盛しているiTunes Storeを破壊して、さらにその進化形であるアップルミュージックを始めるという姿勢には脱帽します。こうした勢いがある限りアップルの栄華は未だ続くはずです。
(3)他の業界にもビジネスモデルの破壊がもたらされる
すでに音楽業界以外でもこうした取り放題のビジネスは活況を呈しています。
その一つは国内ではHulu等の映画・ドラマ見放題サービス、米国では圧倒的No1のシェアをとっているネットフリックスの映画・ドラマ見放題サービスです。
これらのサービスにより破壊されつつあるのが何十年もの間栄華を誇ってきたTV業界です。何年も前に米国のケーブルTV業界のCEOが「TVは死んだ」と言っていました。
しかし、そのケーブルTV業界ですらこうした映画・ドラマ見放題サービスにより破壊されつつあります。
そして今どの業界がこうした取り放題サービスの脅威にさらされているかというと、それは出版業界です。
すでに雑誌業界はインターネットによりその地位を奪われていますが、本の世界はこの日本では未だ健在です。
しかし、すでにアマゾンが米国でこうした方向性を打ち出しています。
「米アマゾン・ドット・コムが近く自社の書籍端末「キンドル」向けに、書籍の定額読み放題サービスを始める準備をしていることが分かった。月額9.99ドル(約1千円)とし、60万冊をそろえる方向で調整しているもよう。音楽や動画で一般的になりつつある定額配信モデルが、最大手アマゾンの参入で書籍分野にも広がりそうだ。」(日本経済新聞2014/7/17 )
このように音楽業界、映像業界、出版業界などがデジタル化の波により現在破壊と創造のプロセスの中にあります。
そのスピードはあまりにも早く目まぐるしい激流です。
こうした激流はこれらの業界と全く関係の無い業界にも波及します。
コンピューターを使った事業を始めると最初は儲かる事がありますが、それは他人もコンピューターを使って同じような事をし始めるのでその競争優位性は失われます。
失われる前に次の新しい事業の種を自分の手で蒔いて、育まなくてはなりません。
これはサイト運営にもあてはまる事です。
そして最も苦痛なことは新しい事業の種をまくためには、時にこれまで育ててきた畑を自分の手で焼き払わなくてはならない事もあるという点です。
それを躊躇してはいけません。
何故なら他人にそれをされるよりは自分でする方が遥かにマシだからです。
過去の資産を守ることだけを考えていたらその資産はよそからやってきた企業に奪われてしまいます。
今の事業がうまく言っている時ほどこの事を忘れてはなりません。
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