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ゼロクリック時代の到来と対策 ――「AIモード」利用者の77.6%は外部サイトへ移動しない

2026年08月21日

「AIモード」を使うユーザーの約77.6%は、「AIモード」の中で得た情報だけで満足し、外部サイトへ移動しないという最新の調査結果が発表されました。この数字が示すのは、Web集客のあり方が根本的に変わりつつあるという事実です。「AIモード」で自社が引用されたとしても、そのユーザーのうち4人に3人以上は自社サイトを訪れない、という時代が既に到来しているのです。

多くの企業のマーケターや経営者にとって、この77.6%という数字は衝撃的なものです。従来のSEO対策は、検索から自社サイトへの流入を最大化することを目標としてきました。しかし、「AIモード」の普及が加速する中で、この目標そのものが達成困難になっています。従来の指標だけでこれからの集客成果を測ろうとすると、実態を大きく見誤る危険性があります。

私の実感としては、この77.6%という数字を「悲観すべき数字」として受け取るか、「新しい機会の指標」として捉えるかで、企業の戦略が全く違うものになります。ゼロクリック時代を悲観するのではなく、新しい時代の集客成果の測り方と作り方を身に付けることが、これからの企業に求められる姿勢です。

今回は、「AIモード」利用者の77.6%が外部サイトへ移動しないというゼロクリック時代の到来と、企業が取るべき対策について解説します。


77.6%という数字の意味


「AIモード」利用者の77.6%が外部サイトへ移動しないという事実の意味を、実務的に整理します。

複数の調査機関のデータによると、「AIモード」でユーザーが1つのセッションを完了する際、外部サイトのリンクをクリックする割合は約22.4%に留まっています。残りの77.6%のユーザーは、「AIモード」の要約回答だけで満足し、引用されているサイトを訪れずにセッションを終える傾向があります。

この数字は、「AIによる概要」時代のゼロクリック率(約65%)よりもさらに高い水準です。「AIモード」の回答が長く網羅的であるため、ユーザーは追加情報を求めずに済むケースが多くなっているのです。



具体的な要因として、以下があります。「AIモード」の回答は「AIによる概要」の約4倍の長さで、詳細な情報を含んでいるため追加情報を求める必要が少ない。マルチターン検索(複数回の対話を1つのセッションとして扱う検索方式)で、疑問点は「AIモード」内で解消できる。複数の引用ソースが統合された形で提示されるため、個別のソースを訪れるインセンティブが低い。これらの要因が重なって、77.6%のユーザーが「AIモード」内で満足する状況が生まれています。

この構造は、図書館の受付で司書に丁寧に教えてもらって、それで疑問が解けたので他の書棚に行かずに帰る利用者と似ています。図書館の受付には、司書がいて利用者の質問に答えてくれるレファレンスサービスがあります。利用者が「〇〇について調べたい」と司書に相談すると、司書は関連する複数の書籍や資料を紹介しながら、質問への回答を丁寧に説明してくれます。この対応で疑問が解ければ、利用者は個々の書籍を借りずに、その情報だけで満足して図書館を後にすることがあります。

「AIモード」も、まったく同じ体験を提供しています。ユーザーは「AIモード」との対話で疑問が解消されれば、引用されているサイトを訪れる必要を感じません。この構造が、77.6%という高いゼロクリック率の背景にあるのです。


従来のSEO指標が通用しなくなる


77.6%のゼロクリック率の下では、従来のSEO指標が実態を正確に反映しなくなります。

これまでのSEOの主要指標は、オーガニックトラフィック(自然検索経由のサイト訪問者数)、検索順位、クリック率、直帰率といった、サイト訪問を前提としたものでした。しかし、「AIモード」経由の露出は、これらの指標には反映されません。「AIモード」で引用されて多くのユーザーに認知されていても、サイト訪問には結びつかないため、従来指標では「効果ゼロ」に見える現象が起きるのです。

この状況で従来指標だけを追いかけていると、以下のような判断ミスが起きやすくなります。実際は AIモードで大きな認知を獲得しているのに、オーガニックトラフィックの減少だけを見て「対策失敗」と判断してしまう。効果のある「AIモード」対策の予算を削って、効果の見えづらい従来型SEOに投資してしまう。長期的に見て重要な認知と信頼の獲得より、短期的なクリック数を追いかけてしまう。こうした判断ミスが、AI検索時代の集客戦略を歪めてしまうのです。


ゼロクリック時代の新しい成果指標


ゼロクリック時代に必要な新しい成果指標を整理します。

1.「AIモード」への引用回数
「AIモード」で自社サイトが引用される回数を、直接的な指標として追跡します。引用されているクエリ、引用の頻度、引用の質(要約の中でどう扱われているか)を継続的にモニタリングします。

2. 指名検索件数
自社名や自社ブランド名での検索件数を追跡します。「AIモード」で認知されたユーザーが、後日指名検索してくれる回数は、間接的な認知獲得の重要な指標です。

3. 業界内での言及頻度
業界メディア、専門ブログ、コミュニティ、SNSで自社が言及される頻度を追跡します。エンティティ(実在する人物や組織としての情報の集合体)としての存在感の指標になります。

4. 直接流入とダイレクトアクセス
URLの直接入力やブックマーク経由の直接流入を追跡します。ブランドを認知して意図的にアクセスするユーザーの規模を示す指標です。

5. 見込み顧客の質と量
問い合わせ・見積依頼・商談化率といった、実際のビジネス成果に近い指標を追跡します。ゼロクリックでも、実際のビジネスに繋がっているかを測ります。


「引用される」ことの価値の再定義


ゼロクリック時代においては、「引用される」ことの価値を再定義する必要があります。

従来の価値観
サイトへの流入 → コンバージョン、という直線的な価値観です。引用は「サイト訪問への入り口」として位置付けられ、訪問に繋がらない引用は価値が低いとされていました。

ゼロクリック時代の価値観
引用そのものが、認知獲得・信頼構築・エンティティの確立という独立した価値を持つ、という新しい価値観です。サイト訪問に繋がらなくても、業界内での存在感を高め、指名検索を増やし、業界メディアからの認知を広げる効果があります。

この価値観の転換ができた企業は、ゼロクリック時代でも成長を続けています。逆に、「クリックされないなら意味がない」という従来の発想に囚われた企業は、AI検索時代の機会を大きく取り逃しています。


中古着物店のクライアントの事例


先日、ある中古着物店のクライアントさんからこんなご相談をいただきました。「オーガニックトラフィックが減っており、SEO対策の効果が出ていないと社内で判断されている。対策を続けるべきか」と。

拝見したところ、確かに検索経由のサイト訪問数は減少していましたが、詳細に分析すると別の指標では改善が起きていました。着物関連のクエリで「AIモード」への引用が明確に増加、店舗名や店主名での指名検索が微増、業界メディアからの取材依頼が発生、といった変化です。従来指標だけを見ると「効果なし」に見えたのですが、実は「AIモード」経由の認知獲得が着実に進んでいた状況だったのです。

私は、成果指標を根本的に見直すことを提案しました。オーガニックトラフィックだけでなく、「AIモード」への引用回数、指名検索件数、業界内での言及頻度、実店舗への来店客数、といった総合的な指標セットに切り替える形です。同時に、既存の「AIモード」対策(着物の種類別・時代別・状態別の詳細解説)を継続強化しました。

半年後、総合指標の改善が明確に見え、経営層も「AIモード」対策の継続を支持する判断に変わりました。実際、地域外や海外からの来店客が明確に増加し、着物の高額商品の販売にも繋がっていきました。ゼロクリック時代の成果指標の再設計が、対策継続の判断と実際のビジネス成果に直結することを示した事例です。


ゼロクリック時代の対策設計


ゼロクリック時代の対策設計のポイントには次のようなものが考えられます。

1. 成果指標の総合化
オーガニックトラフィック単独ではなく、「AIモード」引用回数・指名検索・業界内言及・直接流入・見込み顧客の質と量を組み合わせた総合的な指標セットで成果を測ります。

2. 引用対象になるための投資
サイト訪問を増やす対策ではなく、「AIモード」の引用対象になるための情報発信に投資を集中します。深く網羅的な情報、著者エンティティの強化、E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性、Googleがコンテンツの質を判断する4つの指標)シグナルの充実といった対策です。

3. サイト訪問後の体験の質を上げる
サイト訪問数は減っても、訪問してくれたユーザーへの体験を強化します。フォームの改善、詳細情報の充実、問い合わせ導線の最適化といった、1人あたりの価値を最大化する対策です。

4. 多様なブランド接点の確保
Web検索だけに依存せず、業界メディア、SNS、コミュニティ、メルマガ、ポッドキャストといった多様なブランド接点を確保します。ゼロクリック時代でも、複数の接点で顧客と繋がれる基盤を作ります。


まとめ


今回の話をまとめると、「AIモード」利用者の77.6%が外部サイトへ移動しないゼロクリック時代の到来により、従来のSEO指標だけでは実態を正確に反映できなくなっており、企業は成果指標の総合化・引用対象になるための投資・サイト訪問後の体験強化・多様なブランド接点の確保という4つの対策で新しい時代に適応する必要がある、ということです。

「引用される」ことの価値を再定義し、サイト訪問に繋がらなくても認知獲得・信頼構築・エンティティ確立という独立した価値を持つと理解できた企業だけが、ゼロクリック時代の集客成果を実現できます。悲観的に受け取るのではなく、新しい機会として捉える発想の転換が、これからの企業戦略の基盤になります。

AI検索時代になったからSEOが終わるのではありません。むしろ、本当に信頼される専門家や企業が評価される時代が始まったのです。今後のSEOで成果を出すためには、「検索順位を上げること」だけではなく、「AIやユーザーから信頼される存在になること」を目指す必要があります。

日本市場における「AIモード」の引用ソースの特徴――英語圏との違いを解説

2026年08月19日

「AIモード」の引用ソースの特徴は、日本市場と英語圏市場で明確に異なります。同じ「AIモード」でも、日本語検索と英語検索では、優先されるソースの種類、引用の傾向、企業に求められる対策の方向性に構造的な違いがあるのです。この違いを理解しないまま英語圏の対策手法をそのまま日本市場に適用しても、期待した成果は得られません。

多くの企業のマーケターや経営者は、AI検索対策の情報を主に英語圏のブログや調査から得ています。しかし、そこで説明されている手法や成功事例が、日本市場でも同じように機能するとは限りません。言語構造・情報源の充実度・ユーザー行動の違いといった構造的な差異を無視すると、対策が空回りしてしまうリスクがあるのです。

日本市場の企業支援を長年行ってきた経験から言うと、日本市場特有の「AIモード」の傾向を理解することは、対策の実効性を高める上で不可欠な視点です。英語圏で流通している一般論だけに依拠するのではなく、日本市場での実際の引用パターンや、日本語ならではの発信手法の特性を踏まえた対策設計が、これからの企業戦略の質を左右します。

今回は、日本市場における「AIモード」の引用ソースの特徴と、英語圏との違いを踏まえた企業の対応方針について解説していきます。


日本市場と英語圏市場の構造的な違い


日本市場と英語圏市場の「AIモード」における構造的な違いを、実務的に整理します。

この構造は、同じ「カフェ」という業態でも、地域や国によって好まれる雰囲気やメニュー、営業スタイルが違う状況に似ています。世界中どこにでもカフェは存在しますが、フランスのカフェ、イタリアのバール、アメリカのコーヒーショップ、日本の喫茶店は、それぞれ異なる文化と使われ方を持っています。同じカフェという業態でも、その国の文化・言語・慣習に合わせて発達しているのです。

「AIモード」も、まったく同じ構造で日本市場と英語圏市場で異なる発達を見せています。日本語の言語構造、日本語Web上の情報源の分布、日本のユーザーの検索行動、日本特有のプラットフォームといった要素が組み合わさって、日本市場ならではの「AIモード」の姿が形成されているのです。


日本市場の「AIモード」の主要な引用ソース


日本市場の「AIモード」で主要な引用ソースとなっている媒体には次のようなものがあります。

1. 公的機関のWebサイト
日本市場では、公的機関(省庁・自治体・独立行政法人)のWebサイトからの引用比率が、英語圏より高い傾向があります。国税庁・厚生労働省・中小企業庁といった公的サイトが、業界情報や制度解説の権威ある情報源として頻繁に引用されます。

2. 業界団体・専門団体の公式サイト
各業界の業界団体、専門家団体(税理士会・弁護士会・医師会など)の公式サイトからの引用も、日本市場では顕著に見られます。業界公認の情報源として、AIから高く評価されているのです。

3. 大手メディアの解説記事
日本経済新聞、朝日新聞、東洋経済、ダイヤモンドといった大手メディアの解説記事は、日本市場の「AIモード」で頻繁に引用されます。専門的な解説記事の質と信頼性が、AIから評価されています。

4. 業界特化型メディア
特定業界に特化した専門メディアも、日本市場では重要な引用ソースです。IT・不動産・医療・金融・法律といった各分野の専門メディアが、業界情報の主要な引用元として機能しています。

5. 企業の公式サイト
大手企業から中小企業まで、企業の公式サイトも引用対象になります。ただし、大手企業と業界内での認知が高い企業への引用集中傾向は、英語圏より強く見られます。


英語圏との顕著な違い


日本市場と英語圏で顕著に異なる引用パターンを整理します。

1. Redditの位置付けの違い
英語圏の「AIモード」では、Reddit(米国発の大手掲示板コミュニティ)が主要な引用ソースの1つとして重要視されており、通常の3.5倍の頻度で引用されると報告されています。一方、日本市場ではReddit の利用者が限られているため、この引用パターンはほぼ機能しません。代わりに、はてなブックマークやTogetterといった日本独自のコミュニティが、限定的ながら参照される場合があります。

2. LinkedInの浸透度の違い
英語圏では、LinkedInが「AIモード」の主要な情報源として急速に地位を上げています。日本市場では、LinkedIn の日本国内での利用が限定的であるため、この傾向は英語圏ほど強くありません。ただし、BtoB分野では日本でもLinkedIn の重要性が急速に上がってきており、今後の変化が予想されます。

3. 大手メディアへの依存度の違い
日本市場の「AIモード」は、大手メディアへの引用依存度が英語圏より高い傾向があります。日本独立系メディアやブログの数と質が英語圏ほど充実していないことが背景にあります。

4. 公的機関への信頼度の違い
日本市場では、公的機関のWebサイトからの引用が英語圏より多く見られます。日本のユーザーが公的機関の情報を高く信頼する文化的背景が、AIの引用パターンにも反映されている可能性があります。


日本市場での対策の実務ポイント


日本市場での「AIモード」対策の実務ポイントを整理します。

1. 業界団体・専門団体との連携強化
所属する業界団体、専門家団体、業界公認機関との連携を強化します。業界公認の情報源として発信する立ち位置を確立することが、日本市場では特に有効です。

2. 大手メディア・業界特化メディアへの露出
日本の大手メディアや業界特化型メディアへの寄稿、取材協力、独自データの提供といった対応で、権威ある媒体経由での認知拡大を進めます。

3. 公的機関の情報との連携
公的機関のガイドラインや統計データを引用しながら、自社の見解を発信することで、信頼性シグナルを強化できます。

4. LinkedInへの早期対応
日本市場ではまだLinkedIn利用が限定的ですが、BtoB分野では急速に重要性が上がっています。早期に対応することで、業界内での優位に立てる可能性があります。


今後の日本市場の変化予測


今後の日本市場での「AIモード」の変化予測を整理します。

1. LinkedIn の日本での重要性の上昇
BtoB分野を中心に、LinkedIn の日本市場での重要性が急速に上がっていく見通しです。英語圏ほど極端ではないものの、明確な地位向上が予想されます。

2. 業界特化メディアの位置付けの強化
各業界の専門メディアが、「AIモード」の主要な引用元としての位置付けを強化していく見込みです。業界メディアでの露出戦略の重要性が高まります。

3. 企業の一次情報発信の重要性上昇
企業自身が発信する一次情報(独自調査、実務経験に基づく分析、業界動向レポート)の重要性が、日本市場でも急速に上がっていきます。他社が持たない情報源としての位置付けが、集客成果を大きく左右します。


まとめ


今回の話をまとめると、日本市場の「AIモード」は英語圏とは構造的に異なる引用パターン(公的機関・業界団体・大手メディア・業界特化メディア重視、Reddit/LinkedIn の位置付けの違い)を持っており、企業は日本市場ならではの情報流通経路を踏まえた対策設計が必要である、ということです。

業界団体・専門団体との連携強化、大手メディア・業界特化メディアへの露出、公的機関の情報との連携、日本語ならではの情報構造の最適化、LinkedInへの早期対応という5つの実務ポイントで、日本市場の「AIモード」への対応が可能になります。英語圏の一般論だけに依拠せず、日本市場の実態を踏まえた対策設計が、これからの企業戦略の質を決めるでしょう。

AI検索時代になったからSEOが終わるのではありません。むしろ、本当に信頼される専門家や企業が評価される時代が始まったのです。今後のSEOで成果を出すためには、「検索順位を上げること」だけではなく、「AIやユーザーから信頼される存在になること」を目指す必要があります。

なぜ「AIモード」の月間アクティブユーザーは1年で10億人を突破したのか?――Google最速の普及スピードを解説

2026年08月16日

Googleが「AIモード」をリリースしてから1年で、月間アクティブユーザーが10億人を突破しました。この普及スピードは、Googleが提供してきた他の主要サービス、そしてスマートフォンアプリ全体の中でも極めて異例の速さです。単なる「新機能の追加」ではなく、「情報アクセスの根本的な選択肢の変化」として、世界中のユーザーに受け入れられたことを示しています。

多くの企業のWeb担当者や経営者が、この普及スピードの意味を過小評価しています。「まだ日本では大きな影響が見えない」「まだ多くのユーザーは通常検索を使っている」といった認識で、対応を先送りしている企業も少なくありません。しかし、10億ユーザーという数字は、既にGoogleの主要な検索体験の1つとして「AIモード」が定着していることを示しており、この事実を無視して従来型の対策を続けるのは戦略的に危険です。

長年SEOコンサルタントとして、Google検索の変化を追い続けてきた立場から言うと、この10億ユーザー突破という数字は、企業のWeb集客戦略における「今すぐの対応」を促す強力なシグナルです。無視することはできません。急速な普及の背景となる要因を正しく理解することで、単なる流行ではなく構造的な変化として「AIモード」を捉えられるようになり、対策の優先順位付けが明確になります。

今回は、「AIモード」の月間アクティブユーザーが1年で10億人を突破した背景と、その急速な普及が企業に与える意味について解説します。


「AIモード」1年で10億ユーザーという数字の意味


10億人という数字は、単純に多い少ないの話ではありません。世界のインターネットユーザーの約5分の1に相当する規模で、これはFacebook・YouTube・WhatsAppといった巨大サービスと肩を並べる水準です。しかも、既存の巨大サービスが10億ユーザーに到達するまでには通常5〜10年の時間を要してきましたが、「AIモード」はわずか1年でそこに到達しました。

この普及の速さは、以下のような構造的な意味を持ちます。まず、「AIモード」は単なる目新しい機能ではなく、既に世界規模で日常的に使われるサービスになっているという事実です。次に、ユーザー体験の変化が、想定以上に速いペースで進行しているということです。企業側の対応が数年遅れれば、その間に大量のユーザー行動の変化が既に定着してしまっている可能性があります。

日本国内でも、「AIモード」の月間アクティブユーザーは既に数千万人規模と推定されており、この数字も急速に増加しています。「まだ日本では影響が薄い」という認識は、既に現実と乖離し始めているのです。


他のGoogleサービスと比較した普及スピード




この現象は、スマホが登場して数年で従来型携帯電話を置き換えた急速な普及と似ています。スマホが登場した2007年以降、それまで10年以上にわたって主流だった従来型携帯電話は、わずか数年で市場から姿を消しました。ユーザーが「新しい選択肢」に触れて「これは今までのものより明らかに使いやすい」と感じた瞬間、切り替えは急速に進んだのです。

「AIモード」の普及も、これと同じ構造で急速に進んでいます。過去のGoogle主要サービスの普及スピードを比較すると、以下のような傾向が見えてきます。

Googleマップ:リリース(2005年)から月間アクティブユーザー10億人到達までに約8年を要しました。

Googleフォト:リリース(2015年)から10億人到達までに約4年を要しました。

Googleアシスタント:リリース(2016年)から5億人到達までに約3年、10億人到達には約5年を要しました。

「AIモード」:リリース(2025年)から10億人到達までにわずか1年でした。

この比較から分かるのは、「AIモード」がGoogleの歴史上最速で10億ユーザーに到達したサービスであるということです。ユーザー側の受け入れ準備が既に整っていた状態でリリースされたため、爆発的な普及が可能になったのです。


急速普及の要因1:生成AI検索への慣れの土台


「AIモード」急速普及の第1の要因は、生成AI検索への慣れという土台が既に形成されていたことです。

2022年11月のChatGPTリリース以降、世界中のユーザーが「AIとの対話で情報を得る」体験に触れてきました。ChatGPTだけで月間アクティブユーザーは数億人規模に達し、「AI に質問して回答をもらう」という行動パターンが、日常的なものとして定着しました。

この経験を持ったユーザーにとって、「AIモード」の登場は「新しい体験」ではなく「Google検索の中でも同じことができるようになった」という自然な受け止めでした。使い方を学ぶハードルはほぼゼロで、既に慣れた行動をGoogle検索の中で行えるようになっただけ、という認識だったのです。

これは、他の技術革新でよく見られる「先行サービスがユーザーを教育し、後発サービスがその果実を刈り取る」構造の典型例です。ChatGPTが3年かけて世界のユーザーを対話型AIに慣れさせ、その土壌の上に「AIモード」が投入されたことで、爆発的な普及が可能になったのです。


急速普及の要因2:通常検索への不満の蓄積




第2の要因は、通常のGoogle検索に対するユーザーの不満が蓄積していたことです。

近年のGoogle検索は、以下のようなユーザー不満が広がっていました。SEOで最適化されすぎたページばかりが上位に並び、本当に欲しい情報が見つからない。広告表示が増えすぎて、オーガニックの検索結果に辿り着くのに時間がかかる。複数のサイトを開いて情報を集めるのが面倒。同じような内容の記事が多く、独自の視点や深い情報が見つけにくい。といった不満です。

「AIモード」は、この不満に対する解答として登場しました。1つの画面の中で情報を集められる、複数のソースから統合された回答が得られる、追加質問で情報を深掘りできる、といった体験は、通常検索の不満を根本的に解消する可能性を持っています。

不満を抱えたユーザーが、その不満を解消してくれる新しい選択肢に出会えば、切り替えは急速に進みます。この心理的な地ならしが、「AIモード」の急速普及の重要な要因になっていました。


急速普及の要因3:モバイル環境との親和性




第3の要因は、モバイル環境との高い親和性です。

現代のGoogle検索利用の大半は、スマートフォンからのアクセスです。スマホの小さな画面で複数のサイトを行き来する従来の検索体験は、多くのユーザーにとって使いにくい体験でした。「AIモード」は、1つの画面の中で対話が完結するため、モバイル環境で特に使いやすい体験を提供します。

音声入力による質問、画像を撮影しての質問、動画を送っての質問といったマルチモーダル入力(テキスト・画像・動画・音声など複数の種類の情報を同時に扱えること)も、モバイル環境との相性が良い要素です。スマホの機能を最大限活用できる形での検索体験が、「AIモード」で実現されているのです。

また、通勤中・移動中・スキマ時間といったモバイル利用の場面では、じっくり複数サイトを比較する余裕がないことが多くあります。「AIモード」なら短時間で必要な情報を集められるため、モバイル利用の場面で特に選ばれやすくなっています。


急速普及の要因4:Google側の戦略的なプッシュ


第4の要因は、Google自身が「AIモード」の普及を戦略的に推進していることです。

Googleは、検索結果画面上で「AIモード」タブへの導線を分かりやすく表示し、ユーザーが選びやすい形にしています。多くのユーザーが「AIモード」の存在を認識し、簡単に試せる状態を作っています。

さらに、Googleは「AIモード」の機能を継続的に強化しています。マルチターン検索(複数回の対話を1つのセッションとして扱う検索方式)、マルチモーダル入力、Deep Search機能、Search Liveといった新機能が、次々と「AIモード」に追加されており、ユーザー体験の魅力が継続的に高まっています。

Google が「AIモード」を検索の未来として明確に位置付けているため、この普及は一時的なブームで終わることなく、構造的な変化として定着していく見通しです。


この普及が企業に与える意味


「AIモード」の急速普及が、企業のWeb集客戦略に与える意味には次のようなものが考えられます。

1. 従来型SEOだけでは十分ではない時代
10億ユーザーが「AIモード」を使っている状況では、通常検索の結果ページで上位表示することだけを目指す従来型SEOでは、集客の機会を大きく取り逃します。「AIモード」への対策を並行して進める必要があります。

2. 対策開始の遅れが取り戻せなくなる
急速な普及は、ユーザー行動の急速な変化を意味します。競合企業が既に「AIモード」対策を進めている中で、対応を遅らせるほど差が広がっていきます。

3. マルチモーダル発信の重要性
「AIモード」ではテキストだけでなく、動画・音声・画像といった多様な形式の情報が引用対象になります。これらのモダリティでの発信も、企業のコンテンツ戦略の一部として位置付ける必要があります。


タクシー会社での「AIモード」対応事例


先日、あるタクシー会社のクライアントさんからこんなご相談をいただきました。「配車予約サイトからの流入が減っており、原因を調べたら『AIモード』での相談で他社が引用されていた」と。

拝見したところ、確かにタクシー配車に関するクエリで「AIモード」の引用ソースを確認すると、大手配車アプリの情報が主に引用されていました。この会社の情報は、通常検索では上位に来ていたものの、「AIモード」での引用対象からは外れていたのです。

私は、「AIモード」で引用されやすい情報構造への転換を提案しました。地域内のタクシー利用シーン別(通勤・観光・空港送迎・介護)の詳細ガイド、料金体系の透明な解説、実際の利用者の声、車両の種類と特徴の詳しい紹介といった、深く網羅的な情報を体系化する形です。同時に、YouTubeでの車両紹介動画や乗務員インタビュー動画も並行して発信しました。

3か月後、「〇〇市 タクシー」といった地域系クエリの「AIモード」で自社の情報が引用されるようになり、そこから配車予約が増加しました。この事例は、急速に普及した「AIモード」への迅速な対応が、直接的な集客成果に繋がることを示した事例です。


まとめ


今回の話をまとめると、「AIモード」の月間アクティブユーザーが1年で10億人を突破した背景には、生成AI検索への慣れの土台・通常検索への不満の蓄積・モバイル環境との親和性・Google側の戦略的プッシュという4つの要因があり、この急速な普及は企業のWeb集客戦略に「今すぐの対応」を求める強力なシグナルになっている、ということです。

Googleの主要サービスの歴史上最速で10億ユーザーに到達した事実は、「AIモード」が一時的なブームではなく構造的な変化として定着していく見通しを示しています。従来型SEOだけでは不十分な時代、対策開始の遅れが取り戻せなくなる状況、マルチモーダル発信の重要性という3つの意味を認識し、迅速な対応を進めることが企業の集客成果に直結します。

AI検索時代になったからSEOが終わるのではありません。むしろ、本当に信頼される専門家や企業が評価される時代が始まったのです。今後のSEOで成果を出すためには、「検索順位を上げること」だけではなく、「AIやユーザーから信頼される存在になること」を目指す必要があります。

「AIによる概要」ばかり見るようになった自分に驚いた・・・精度向上とローカル検索への浸透が変えたもの

2026年08月09日

最近、私自身の検索行動が明らかに変わってきました。

Googleで何かを調べたとき、検索結果ページの一番上に表示される「AIによる概要」の内容が、以前よりもはっきりと正確になっていると感じるのです。少し前までは「一応読むけれど、結局は下の検索結果をクリックして確かめる」というのが私の使い方でした。ところが今は、「AIによる概要」を読んだ時点で疑問が解消してしまうことが増えています。

さらに驚いたのは、自分の中に生まれた感情のほうです。「AIによる概要」に求めていた答えが書かれていたとき、私は「良かった、これで分かった。検索結果のリンクをクリックしなくて済むから時間が節約できる」と喜んでいました。

Webサイトのアクセスを増やすことを20年以上仕事にしてきた人間が、リンクをクリックせずに済んだことを喜んでいる。この自己矛盾に気づいたとき、これは記事にすべき変化だと思いました。

今回は、私が体験したこの変化が、海外の調査データでどう裏付けられているのかを整理していきます。


「AIによる概要」の正答率は85%から91%に上がっていた


まず、「精度が上がった気がする」という私の実感は、気のせいではありませんでした。

ニューヨーク・タイムズがAIスタートアップのOumiと共同で行った分析によると、「AIによる概要」が事実確認用のテストに正しく答えられた割合は、2025年10月時点の85%から、2026年2月には91%へと上昇していました。わずか4か月で6ポイントの改善です。

この背景には、「AIによる概要」を動かしているAIモデルが、Gemini 2からGemini 3へと世代交代したことがあります。土台になっているエンジンが入れ替わったのですから、答えの質が変わるのは当然といえば当然です。

ただし、この調査には見逃せない指摘も含まれています。正解した回答のうち、出典として示されたページの内容では裏づけられないものの割合が、37%から56%へと悪化していたのです。

これは「グラウンディング」(AIが自分の学習した知識だけで答えるのではなく、検索して見つけてきた実在の情報に基づいて答える仕組み)が弱まっていることを意味します。つまり「答えは合っているのに、なぜその答えになったのかを示す根拠のほうがずれている」という状態が増えているわけです。

料理にたとえるなら、出てきた料理はおいしいのに、添えられたレシピに書かれた材料と実際に使われた材料が食い違っているようなものです。食べる分には困りませんが、同じ味を再現しようとすると途端に困ります。

なお、Googleはこの分析について、使われたテストに欠陥があり、実際にユーザーが行う検索を反映していないと反論しています。数字の受け止め方には少し幅を持たせておくのがよいと思います。


なぜ「AIモード」ではなく「AIによる概要」を選んでしまうのか



もう一つ自分でも意外だったのが、私が「AIモード」をほとんど使っていないという事実です。

Googleは対話しながら検索できる「AIモード」を大きく打ち出しています。それにもかかわらず、私は検索結果ページに自動的に出てくる「AIによる概要」ばかり見ている。この違いは何なのでしょうか。

説明してくれるデータがあります。2026年4月に実施された、高額な買い物185件を対象にしたユーザー行動調査です。

この調査では、「AIモード」で行われたタスクのうち88%で、ユーザーはAIが提示した候補リストをそのまま受け入れていました。74%が一番上に挙げられた選択肢を選び、64%は何もクリックせずに終えています。

一方、「AIによる概要」では、ユーザーはAIの答えを読みながらも、その下に並ぶ検索結果を見比べて評価を続ける傾向が確認されました。

つまり「AIモード」は全部おまかせ、「AIによる概要」は参考意見を聞きつつ自分でも確かめる、という使い分けが自然に起きているわけです。旅行にたとえるなら、「AIモード」はツアーガイドに完全についていく旅、「AIによる概要」は現地の人におすすめを聞いてから自分の足で歩く旅、というイメージで捉えてください。

私が「AIによる概要」を選んでしまうのは、無意識のうちに「自分で確かめる余地」を残しておきたいからだと気づきました。そして皮肉なことに、精度が上がるほど、その確かめる工程のほうを省くようになっていきます。


ローカル検索の68%に「AIによる概要」が出ている


私の依存度をさらに高めたのが、ローカル検索(地域名やお店を含む検索)での変化です。

少し前まで、ローカル検索といえば地図とお店が3件並ぶ「ローカルパック」が主役でした。ところが最近は、その上に「AIによる概要」が当たり前のように表示されます。


米国のローカルSEO専門企業Whitesparkの調査では、ローカル検索の68%に「AIによる概要」が出現していたのに対し、ローカルパックの出現は39%にとどまりました。

検索の意図別に見ると差はさらに歴然としています。「タコス サンフランシスコ」のように単純にお店を探す検索では15%程度でしたが、「近くの眼科検診はどれくらい時間がかかる?」といった情報を知りたい検索では92%、両方の要素が混ざった検索では97%に達していました。

ここで重要なのは、ローカルパックと「AIによる概要」では、選ばれ方の仕組みがまったく違うという点です。ローカルパックはGoogleビジネスプロフィールの登録情報から3件を引っ張ってきます。それに対して「AIによる概要」は、まず答えの文章を組み立てて、そのあとにどのサイトを出典として示すかを決めています。


そのため、ローカルパックでは上位に出ているのに、同じキーワードの「AIによる概要」ではまったく触れられない、という事業者が実際に出てきています。地域ビジネスにとって、これは無視できない変化です。


「クリックしなくて済んだ」と喜ぶ自分に驚いた話


そして冒頭に書いた、あの感情です。

こうした行動は「ゼロクリック」(検索した人がどのサイトにも移動せず、検索結果ページだけで用事を済ませてしまうこと)と呼ばれます。

米国の調査機関Pew Research Centerは、900人の成人が実際にどうブラウザを操作したかを追跡しました。その結果、「AIによる概要」が表示された検索で下の検索結果をクリックした人は8%にとどまり、表示されなかった場合の15%のほぼ半分でした。「AIによる概要」の中に置かれた出典リンクをクリックした人は、わずか1%です。

さらに象徴的なのが、「AIによる概要」を見たあとにそこで検索をやめてしまった人が26%いたという数字です。表示されなかった場合は16%でした。

この10ポイントの差こそ、まさに私が感じた「良かった、これで分かった」という満足感の正体だと思っています。ユーザーは競合サイトに流れたのではありません。行く必要そのものがなくなったのです。


日本のユーザーはまだ「AIによる概要」を素通りしている


ところが、ここで面白いデータがあります。

アウンコンサルティングが2026年7月に発表した、日本・アメリカ・ドイツ・インド・シンガポールの5か国を対象とした調査です。この調査で日本の回答者の最多回答は「AIによる概要は読まずに、下部の自然検索結果からウェブサイトにアクセスする」で36.7%。しかもこれは5か国中で最も高い数値でした。

つまり日本の平均的なユーザーは、今のところ私とは正反対の行動をとっているわけです。

ただ、私はこれを「日本はまだ大丈夫」という材料だとは考えていません。むしろ逆です。

日本のユーザーが「AIによる概要」を素通りしているのは、まだ内容を信用しきれていないからでしょう。しかし、その精度は先ほど見たとおり着実に上がり続けています。信用できると多くの人が感じた瞬間に、日本でも一気に私と同じ行動が広がります。

言い換えれば、今の日本は猶予期間の中にいます。この期間のうちに手を打てるかどうかで、数年後のアクセス数は大きく変わってきます。


あるリフォーム会社のクライアントさんに起きた変化


先日、あるリフォーム会社のクライアントさんからこんなご相談をいただきました。「地域名を入れたキーワードでの検索順位は下がっていないのに、問い合わせだけが減っている」と。

Googleサーチコンソールを拝見すると、表示回数はむしろ増えていて、クリック率だけが落ちていました。実際に検索してみると、上部に「AIによる概要」が出ており、そこには近隣の別会社のサイトが出典として並んでいたのです。

私は「順位を上げる作業ではなく、AIに引用してもらう作業に切り替えましょう」とお伝えしました。具体的には、施工費用の目安、工期、よくある質問への回答を、それぞれ独立した見出しと段落で書き直していただきました。1つの段落だけを抜き出して読んでも意味が通じる形にするのがポイントです。

数か月後、「AIによる概要」にそのクライアントさんのページが出典として表示されるようになり、問い合わせ数も戻ってきました。順位を追いかけていただけでは、この結果にはたどり着けなかったと思います。


これからのSEOで優先すべき3つのこと


ここまでの流れを踏まえて、今すぐ取り組むべきことを3つに整理します。

1:抜き出されやすい段落の書き方に変える
「AIによる概要」は、ページ全体ではなく特定の段落を単位として抜き出しています。そのため、前の文脈を読まないと意味が通じない書き方は不利になります。1つの段落だけを読んでも答えとして成立する形に整えてください。

2:情報を知りたい検索に答えるページを増やす
先ほどのデータのとおり、「AIによる概要」は情報を知りたい検索で圧倒的に多く出ます。「費用はいくらか」「期間はどれくらいか」「何が違うのか」といった疑問に正面から答えるページを持っている会社ほど、引用される機会が増えていきます。

3:誰が書いたのかを明示する
E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性という、Googleがコンテンツを評価するときに重視する4つの観点)を示すことは、AIに引用される確率にも直結します。著者名、経歴、保有資格、実績を必ず明記してください。名前のない情報は、AIにとっても信用しづらいものです。


まとめ


「AIによる概要」の正答率は85%から91%へ上がり、ローカル検索の68%にまで浸透し、その結果として利用者はリンクをクリックしなくなっています。そして私自身が、クリックせずに済んだことを喜ぶ側に回っていました。

日本のユーザーはまだ「AIによる概要」を素通りする傾向が5か国中で最も強く、その意味で日本の企業には準備の時間が残されています。しかし、それが長く続く猶予でないことは、精度の向上ペースを見れば明らかです。

やるべきことは、順位を上げる努力から、AIに引用される努力へと軸足を移すことです。段落単位で意味が完結する文章を書き、読者の疑問に正面から答え、誰が書いたのかを明示する。どれも地味な作業ですが、これが最も確実な道です。

AI検索時代になったからSEOが終わるのではありません。むしろ、本当に信頼される専門家や企業が評価される時代が始まったのです。今後のSEOで成果を出すためには、「検索順位を上げること」だけではなく、「AIやユーザーから信頼される存在になること」を目指す必要があります。

「AIモード」とは何か?――Google検索の中に生まれた「もう1つのタブ」の正体

2026年08月08日

2025年から2026年にかけて、Google検索の中に「AIモード」という新しいタブが登場しました。従来の検索結果を返す通常の検索とは別に、AIとの対話形式で情報を探せる専用の場所が、Google検索の中に用意されたのです。この「AIモード」は、わずか1年で月間アクティブユーザー10億人を突破する驚異的なスピードで普及しており、企業のWeb集客戦略に無視できない影響を与え始めています。

多くの企業のWeb担当者や経営者が、「AIモード」の存在は知っているものの、その正体を正確に理解しないまま従来型のSEO対策を続けています。しかし、「AIモード」は「AIによる概要」とは根本的に異なる仕組みで動いており、対策の方向性も大きく異なります。この違いを認識せずに対策を進めると、獲得できるはずの集客成果を大きく取り逃すことになります。

長年SEOコンサルタントとして、Google検索の変化を追い続けてきた立場から言うと、「AIモード」の登場はGoogle検索の歴史における最も大きな変化の1つです。単なる新機能ではなく、検索体験そのものの再定義に近い出来事だと捉える必要があります。この認識を持って対策を組み立てられる企業と、従来型の発想のまま対応する企業では、今後の集客成果に決定的な差が生まれてくるでしょう。

今回は、「AIモード」の正体、「AIによる概要」との決定的な違い、そして企業が今から準備すべきことについて、実務の視点から解説していきます。


「AIモード」とはそもそも何か


「AIモード」とは、Google検索の中に用意された、AIとの対話形式で情報を探せる専用のタブです。従来の「すべて」「画像」「動画」「ニュース」「ショッピング」といったタブと並んで、「AI Mode」または「AIモード」と表記された新しいタブが表示され、ユーザーはこのタブをクリックすることで、AIによる会話型の検索体験に切り替えることができます。

「AIモード」の内部では、GoogleのAIモデルであるGemini 3.5 Flash(2026年5月時点の既定モデル、高速かつ推論性能が高い大規模言語モデル)が動いており、ユーザーの質問に対して長文の要約回答を生成します。単発の質問への回答だけでなく、追加の質問(「もう少し詳しく」「別のパターンは?」など)を受け付け、会話の文脈を保持したまま何度もやり取りができる、いわゆるマルチターン検索(複数回の対話を1つのセッションとして扱う検索方式)に対応しています。



この構造は、銀行の中で、通常のATMコーナーとは別に設けられた「相談カウンター」のような、より深い相談ができる専門窓口と似ています。ATMコーナーでは、お金の預け入れや引き出しといった定型的な取引を、素早く自分で行います。一方、相談カウンターに座ると、担当者と対面で「住宅ローンの相談をしたい」「相続に関する複雑な状況を整理したい」といった、じっくり時間をかけた対話ができます。同じ銀行の店舗の中に、目的の違う2つの窓口が並列に存在しているのです。

Google検索も、まったく同じ構造です。通常の検索タブは、キーワードに関連する情報を素早く探す従来型の窓口です。「AIモード」タブは、AIとの対話でじっくり情報を集める新しい相談窓口として、同じGoogle検索の中に並列に用意されているのです。


「AIによる概要」との決定的な違い



「AIモード」と混同されやすいのが、既に多くの日本のユーザーが目にしている「AIによる概要」です。両者はどちらもGoogleのAIによる要約回答という点では共通していますが、その表示方法・使われるモデル・回答の質・ユーザー行動のすべてが根本的に異なります。

1. 表示のされ方が違う
「AIによる概要」は、通常の検索結果画面の最上部に自動的に表示されます。ユーザーが特に何もしなくても、Googleが「このクエリはAI要約が役立つ」と判断すれば表示される受動的な体験です。一方、「AIモード」は、ユーザーが自分でタブを選んで切り替えないと表示されません。能動的な選択が必要な点が根本的に違います。

2. 使われるAIモデルが違う
「AIによる概要」は、比較的軽量なAIモデルで動作しています。一方、「AIモード」はGemini 3.5 Flashという専用モデルで動いており、より深い推論と長文生成が可能です。

3. 回答の長さと深さが違う
「AIモード」の回答は「AIによる概要」の約4倍の長さがあると報告されています。単なる要約ではなく、複数の観点を含む詳細な情報レポートに近い形式で生成されます。

4. ユーザーの検索行動が違う
「AIモード」を使うユーザーは、より長く・複雑で・具体的なクエリを入力する傾向があります。単発の質問ではなく、じっくり検討したい主題を持って「AIモード」を選んでいるユーザーが中心です。


「AIモード」の会話型検索という新しい体験


「AIモード」が提供する会話型検索は、これまでのGoogle検索とは根本的に異なる体験です。

1. 1回で完結しない、複数のやり取り
ユーザーは最初の質問を入力した後、返答を見て追加の質問を投げかけます。「別のパターンは?」「その理由は?」「もう少し具体的に」といった追加質問で、情報を深掘りしていく体験です。従来の検索が「1つのクエリ→複数の検索結果」だったのに対して、「AIモード」は「対話の連続→徐々に情報が深まる」という構造になっています。

2. マルチモーダル入力の受け付け
「AIモード」は、テキストだけでなく画像・動画・音声での質問を受け付けます。マルチモーダル(テキスト・画像・動画・音声など複数の種類の情報を同時に扱えること)対応により、「この画像に写っているものを詳しく教えて」「この動画の内容に関連する情報を集めて」といった多様な形式での質問が可能です。

3. 調査エージェント的な動作
「AIモード」の裏側では、ユーザーの1つの質問に対して、AIが数十から数百の「サブクエリ(元のクエリを細分化した派生クエリ)」を自動生成し、それぞれについて並行して情報を集めます。この仕組みをクエリファンアウト(Query Fan-Out、1つのクエリから多数のサブクエリに展開する仕組み)と呼びます。「AIモード」のクエリファンアウトは、「AIによる概要」より深く広く展開されるため、より網羅的な回答が生成されます。


「AIモード」が急速に普及した背景


「AIモード」は、リリースからわずか1年で月間アクティブユーザー10億人を突破しました。この急速な普及の背景を整理します。

1. ChatGPTなどの生成AI検索への慣れ
多くのユーザーがChatGPTやGeminiといった生成AIとの対話に慣れてきており、「AIとの会話で情報を探す」体験に抵抗がなくなっています。「AIモード」は、そのユーザー体験をGoogle検索の中で提供する形として、自然に受け入れられました。

2. 通常検索での不満の蓄積
「複数のサイトを開いて情報を集めるのが面倒」「広告やSEO最適化されたページばかりで本当に欲しい情報が見つからない」といった、通常検索への不満を持つユーザーが増えていました。「AIモード」は、この不満に応える新しい選択肢として支持されています。

3. モバイル端末での使いやすさ
複数のサイトを行き来する従来の検索は、モバイル端末では特に面倒でした。「AIモード」なら、1つの画面の中で対話が完結するため、モバイルでも使いやすい体験になります。

4. Google側の積極的なプッシュ
Google自身も「AIモード」タブへの導線を検索結果画面上で分かりやすく表示し、ユーザーが選びやすい形にしています。企業として「AIモード」の普及を戦略的に進めている状況です。


「AIモード」で企業が直面する課題


「AIモード」の普及によって、企業のWeb集客には新しい課題が生じています。

1. 「AIモード」利用者の77.6%は外部サイトへ移動しない
複数の調査によると、「AIモード」を使うユーザーの約77.6%は、AIの回答を読むだけで満足し、引用されているサイトを訪れないと報告されています。従来型のSEO対策で「サイト訪問を獲得する」ことを目標としていた企業にとって、この数字は深刻です。

2. 引用対象になる条件が「AIによる概要」と異なる
「AIモード」で引用されやすいコンテンツは、長文で網羅的な深い情報を提供するページです。「AIによる概要」対策で有効だった「短く簡潔で結論先出しの情報」とは正反対の方向で最適化する必要があります。

3. 引用ソースが多様化している
「AIモード」では、通常のWebサイトだけでなく、YouTube動画(全引用の約20%)、Reddit(「AIによる概要」の3.5倍引用される)、LinkedIn記事などが積極的に引用されます。テキスト記事だけの発信戦略では十分ではなくなりつつあります。

4つ目:BtoB企業の情報が優先される傾向
「AIモード」では、BtoB向けの詳細な専門情報が高く評価される傾向があります。BtoC向けの浅い情報は選ばれにくく、深い専門情報を持つ企業が有利になっています。


「AIモード」対策の成功事例


先日、ある楽器店のクライアントさんからこんなご相談をいただきました。「若い顧客層がGoogleの通常検索より『AIモード』で楽器選びの相談をするようになり、自社の情報が全く反映されない」と。

拝見したところ、店舗としては熟練の楽器選定のノウハウを持っていましたが、Webサイトの記事が「〇〇ギター おすすめ5選」といった短い記事中心でした。「AIモード」で引用されやすい「長文で網羅的な情報」という条件を満たしていない状態だったのです。ユーザーは「初心者から中級者への移行時期にどの楽器を選ぶべきか」「予算10万円で本格的な演奏を目指すなら何を優先するか」といった、じっくりした相談を「AIモード」で行っていました。

私は、店主の楽器選定に関する深い知見を、網羅的な長文記事として整備することを提案しました。楽器の種類別・予算別・演奏スタイル別・演奏歴別の選び方を、それぞれ数千字規模の深い解説として整理する形です。同時に、店主が実際に楽器選定の相談に応じている動画をYouTubeで公開し、字幕を丁寧に整えました。

4か月後、楽器選びの相談的なクエリで「AIモード」への引用が発生し、そこからの遠方からの来店客が明確に増加しました。「AIモード」対策では、深く網羅的な情報が武器になることを実感できた事例です。


企業が今から準備すべき対策


「AIモード」時代に向けて、企業が今から準備すべき対策を整理します。

1. 網羅的な長文コンテンツの整備
「AIによる概要」対策で有効だった「短く簡潔なコンテンツ」ではなく、深く網羅的な長文コンテンツを、主要テーマごとに整備します。「ピラーページ」(特定テーマの網羅的な柱コンテンツ)としての設計が有効です。

2. 著者エンティティの強化
「AIモード」では、著者の権威性がより厳しく評価されます。実名・経歴・実績・所属団体・外部プロフィールとの紐付けなど、著者のエンティティ(実在する人物や組織としての情報の集合体)確立を最優先で進めます。

3. マルチモーダル発信の開始
YouTubeでの動画発信、LinkedInでの記事投稿、Redditコミュニティでの継続的な発信など、テキスト記事以外のチャネルでの情報発信を体系化します。「AIモード」の引用ソースは多様化しているため、複数チャネルでの露出が必要です。

4. BtoB向けの深い専門情報の発信
BtoB企業でなくても、「BtoB担当者が読む水準の深い専門情報」を発信することで、「AIモード」からの評価が上がります。一般向けの浅い情報より、専門的で深い情報の方が「AIモード」時代には有利になります。


まとめ


今回の話をまとめると、「AIモード」はGoogle検索の中に用意された会話型検索の専用タブであり、「AIによる概要」とは根本的に異なる仕組み・体験・対策方針を持ち、1年で月間10億ユーザーを突破する急速な普及の中で、企業のWeb集客戦略に大きな影響を与える存在になっている、ということです。

「AIによる概要」との違いを理解した上で、網羅的な長文コンテンツの整備・著者エンティティの強化・マルチモーダル発信の開始・BtoB水準の深い専門情報の発信という4つの準備を今から進めることで、「AIモード」時代への適応が可能になります。「AIモード」を単なる新機能ではなく、Google検索の本質的な変化として捉える発想が、これからの企業戦略の核になります。

AI検索時代になったからSEOが終わるのではありません。むしろ、本当に信頼される専門家や企業が評価される時代が始まったのです。今後のSEOで成果を出すためには、「検索順位を上げること」だけではなく、「AIやユーザーから信頼される存在になること」を目指す必要があります。
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