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Googleの「AIモード」が国内で提供開始! 予想される変化とWebマーケティングへの影響は?

2025年09月12日

2025年9月9日、Googleは日本で「AIモード」の提供を正式に開始しました。
これは従来の検索結果ページに加えて、生成AIがユーザーの質問を理解し、複数の情報をまとめた回答を提示する新しい検索体験です。すでに日本を含む180以上の国と地域で順次展開が進められており、検索行動そのものが変わる可能性があると注目されています。

これまでのGoogle検索は「キーワードを入れる → 検索結果の一覧が出る → 気になるページをクリック」という流れが基本でした。しかしAIモードでは、検索画面上にAIがまとめた答えが最初に提示され、必要に応じて追加質問も可能になります。検索はより会話的で生成的、動的なものへと進化したのです。

《AIモードに「おすすめのSEOセミナーは」と入力した際の回答結果》


AIモードが引き起こす変化


このAIモードが公開されたことによりどのような変化が今度起こるのでしょうか?現時点では少なくとも以下のような変化が生じると予想されます。

1. ゼロクリック検索が増える


AIモードでは、ユーザーが欲しい情報が検索結果ページ上で完結してしまうことが多くなります。これを「ゼロクリック検索」と呼びます。

例えば「東京 観光スポット」と検索すると、従来は旅行情報サイトやブログにアクセスしておすすめの場所を調べる必要がありました。しかしAIモードでは「浅草寺や東京タワー、渋谷スクランブル交差点が人気です」といった要約がすぐに表示されます。

利用者にとってはとても便利ですが、情報サイトの運営者にとっては「クリックされずに終わる=アクセス数の減少」というリスクを抱えることになります。

すでに「2024年になって、Google検索の約60%がクリックされずに終了している」という衝撃の調査結果が米国で発表されています。この調査では、米国と欧州(EU)で Google 検索のうち 58.5%(米国)、59.7%(EU) がリンクをクリックせずに終わる(zero-click search)と報告しています。

2. 検索クエリ(キーワード)の長さや複雑さが変わる


例えば「カレー レシピ」と検索すると、従来は料理サイトを開いて作り方を順番に確認する必要がありました。しかしAIモードでは「玉ねぎと鶏肉を炒めてルーを加えるシンプルな方法です」といった要約がすぐに表示されます。
短いキーワードではなく、「子ども向けに辛くないカレーを作るには?」のような質問文を入力する人が増えていくのです。

つまり検索はより会話に近い形式となり、AIが質問の意図を理解して応答するため、複雑な条件や文脈を含んだ検索が増えるのです。SEO対策もキーワードを並べるだけではなく、ユーザーが抱く質問にきちんと答えるコンテンツを作成することが重要になります。

3. 引用元・情報源を明確にする必要が生じる


AIが回答を作るとき、信頼できる情報源を優先して利用します。誤情報を引用すればGoogle自体の信頼も損なうため、AIは「信頼性のあるサイトかどうか」を判断基準にしているのです。

このため今後は「情報が正確であるか」「出典が明示されているか」「専門家や一次情報をもとにしているか」がより重要になります。医療・法律・金融など専門性の高い分野では、監修や引用の質が検索評価を左右する可能性が高まります。

《情報の信憑性を担保するために出典を明からにしている例》



4. UI/UX(見せ方・使いやすさ)の重要性が増す


AIモードでは、ユーザーが追加の質問をしたり関連情報を深掘りしたりすることが可能です。その際に重要になるのが、サイトの見やすさ・使いやすさです。

もしスマホで文字が小さすぎる、ページの表示が遅い、ナビゲーションがわかりにくいといった欠点があれば、AIが引用を避ける可能性も考えられます。

これからのSEOは単に「内容があるかどうか」だけでなく、「快適に読めるかどうか」も含めたUX全体が評価対象になると予想されます。


Webマーケティング全体への影響


GoogleのAIモード導入は、単なるSEOの変化にとどまらず、Webマーケティングの考え方全体を揺さぶる可能性があります。

流入数の変化


まず一番の影響はウェブサイトのアクセス数が減少するということです。AIモードでは、ユーザーが欲しい答えが検索結果ページの中で完結してしまうことが増えます。これまでは検索結果に上位表示されればクリックを稼げたのに、今後は答えを見て満足して離脱するケースが増えるかもしれません。

とくにFAQや「◯◯とは?」といった基礎的な情報、比較記事などはゼロクリックで完結しやすい分野です。そのため流入数の減少は避けられない現象として受け止め、他の施策で補う発想が必要になります。

ブランド認知の重要性


しかしアクセスが減ったとしても、それで終わりではありません。AIモードの回答には、参照したサイトのリンクや名前が表示されることがあります。つまりページに訪問されなくても「この情報は〇〇社から引用されました」と露出するチャンスがあるのです。

ブランドにとっては、直接の流入が減っても認知度を高める機会になる可能性があります。これまで以上に「どのブランドが信頼されているか」という点が浮き彫りになり、名前が出るかどうかがマーケティング上の価値を左右する時代になるでしょう。

質重視のコンテンツ戦略


次に重要なのは「量から質への転換」です。これまでは大量の記事を量産してキーワードを幅広くカバーする戦略も有効でしたが、AIが複数の情報源を統合して要約する時代には、独自性のない情報は埋もれてしまいます。

例えば、単なるニュースの焼き直し記事ではなく、オリジナルの調査データ、事例紹介、体験談などを盛り込むことで「このサイトにしかない情報」として価値を持たせる必要があります。

ユーザーにとって役立つだけでなく、AIにとっても「引用する価値のあるコンテンツ」と判断されやすくなるのです。

競合との差別化


AIモード時代では、ただ検索順位で上にいるだけでは十分ではありません。AIが回答を生成するときに、どのサイトを参照するかという新しい競争が始まります。似たような情報が大量にある場合、AIはその中からより信頼性が高く、わかりやすいサイトを優先的に選びます。

つまり、競合と同じ内容を扱っていても差別化できていなければ、AIの回答に採用されない可能性が高いのです。他社にない切り口や、分かりやすい構成、最新の情報を提供する工夫が欠かせなくなるでしょう。

指標の見直し


従来のSEOでは「検索順位」「クリック数」「CTR(クリック率)」が重要な指標でした。しかしAIモードの時代には、順位が高くてもAIが回答を生成してしまえばクリックが減ることがあります。

そこで新しく注目すべきなのは「AIの回答に引用された回数」や「ブランド名が検索画面に登場した頻度」です。アクセス数が減ったとしても、ブランド認知が広がっているのなら、その施策は成功しているとも考えられます。

マーケティングの評価指標がアクセス重視から認知・信頼重視へシフトしていくのは間違いないでしょう。

広告の役割増加


最後に忘れてはならないのが広告です。AIモードによって自然検索からの流入が減少する分、広告の役割はより重要になります。検索広告やディスプレイ広告、SNS広告などを組み合わせることで、減ったアクセスを補う必要が出てくるでしょう。

また、AIモードでの認知と広告施策を組み合わせることで、より効果的な集客につなげることも可能です。つまり、SEOだけに依存するのではなく、広告とSEOを両輪で動かす戦略が求められるのです。


まとめ


AIモードの登場は、SEOの常識を変えるだけでなく、Webマーケティング全体の発想を見直すきっかけになります。アクセス数が減る一方で、ブランド認知や信頼性を高めるチャンスも広がります。重要なのは「引用されるに足る質の高い情報を提供すること」と「広告やSNSなどの他の施策と組み合わせて総合的に集客を考えること」です。

多くの企業にとってこれは脅威ともとれますが、千載一遇のチャンスが来たとも言えます。AI時代の変化を正しく理解し、早い段階で対応することで、競合に先んじることができるはず。

全日本SEO協会は、Googleの「AIモード」で自社サイトやブランドを取り上げてもらうためのAEOやAIOの研究と実践に取り組み、サイト運営者の皆さまと共にAI検索時代を生き抜くノウハウを共有していきます。

ChatGPTとAIモードの違いとは?

2025年09月11日

SEOの相談を受けていると、ここ最近は話題が大きく変わってきました。少し前までは「どんなキーワードを狙うか」や「どうすれば検索順位を上げられるか」といった話が中心でした。ところが今では、「ChatGPTとGoogleのAIモードの違いは何?」「どうすればAIに自社サイトを紹介してもらえるのか?」という質問が半分以上を占めるようになっています。

つまり、今の多くのサイト運営者にとって一番の関心事は「順位」ではなく「AIに選ばれるかどうか」になっているのです。


ChatGPTとは何か?


ChatGPTは、米OpenAIが開発したAIチャットサービスです。2022年11月30日に公開されると、その自然な会話能力が世界中に大きな衝撃を与え、わずか数日で数百万人のユーザーが登録するほどになり、公開2か月でユーザー数が1億人に達することが伝えられ話題となりました。

ユーザーが質問をすると、人間と会話しているかのように自然な答えを返してくれるのが特徴です。
Google検索のようにインターネットを巡回して順位をつける仕組みではありません。あらかじめ大量の文章データを学習しており、その知識をもとにもっともらしい答えを作り出しています。

たとえば「SEOとは?」と質問すると、過去に学習した知識や会話の流れを使って文章を組み立てます。常に最新情報を持っているわけではないので、新しい出来事には答えられないこともあります。



また、有料版の「ChatGPT Plus(月20ドル)」や「ChatGPT Pro(月200ドル)」では、最新のGPT-5を利用できたり、最近ではウェブ検索機能が実装されたためリアルタイム情報を扱えたりするようになります。

《参考サイト》 ChatGPT 料金設定


AIモードとは何か?


AIモードは、Google検索に新しく追加された機能です。これをオンにすると、検索結果の画面がAIによる答えを中心に切り替わります。
これまでの検索では青いリンクが並んでいましたが、AIモードではまずAIがまとめた答えがページ上部に表示されます。その後に関連するリンクやブランド名が紹介される流れです。



Google公式ブログでも「より直感的で包括的な検索体験」を目指すと説明されており、まさに検索の進化版といえます。つまり、これまでは「情報を探す入口」だった検索が、「AIがまとめた答えそのものを最初に見せる仕組み」に変わったのです。


ChatGPTとAIモードの違い


両者を混同する人も多いですが、実際には大きな違いがあります。
ChatGPTは「AIアシスタント」で、ユーザーが直接質問して会話をするイメージです。会話の柔軟さが強みですが、学習した過去データに依存するため最新情報に弱い面があります。

一方でAIモードは「検索の延長線」にあります。Googleが今も収集している最新の情報を使うため、新しいニュースやサービスも反映されやすい特徴があります。スイッチを入れるだけで使える点もシンプルです。

《ChatGPTとAIモードの比較》


米メディアSearch Engine Journalの調査でも、同じ質問をしてもChatGPTとAIモードでは表示されるブランドが62%以上異なると報告されています。これは、ChatGPTが過去のデータから答えるのに対し、AIモードは最新の検索情報を取り入れているためです。

ChatGPTは「知識豊富な友人に相談する」イメージです。友人は自分の経験や本で得た知識をもとに、もっともらしい答えを返してくれます。
AIモードは「雑誌編集者が取材してまとめた記事を読ませてくれる」ような感覚です。最新で正確ですが、取り上げられる内容は厳選されています。
つまり、ChatGPTは会話が柔軟で親しみやすいけれど情報が古いこともあり、AIモードは最新で精度が高いけれど紹介される対象は限られる、といった違いがあります。



SEOへの影響


サイト運営者にとって気になるのは「どうすればAIに取り上げられるのか」という点です。
ChatGPTは、歴史があり多くの人に言及されてきたブランドやサイトを取り上げやすい傾向があります。新しいブランドが紹介されるには時間がかかり、外部での話題作りが必要です。

一方、AIモードは従来のSEOの延長にあり、質の高い記事や最新情報を発信していれば比較的早い段階で取り上げられる可能性があります。
ただし、AIモードに表示されるブランドはごく少数に絞られるため、選ばれれば大きな効果がありますが、選ばれなければ競合に大きく差をつけられるリスクもあります。

このように、ChatGPTは「会話型のAI」、AIモードは「検索を進化させたAI」という違いがあります。SEOの世界では、この2つのAIがもたらす変化にどう対応するかが大きなテーマになっています。これからは「検索順位」だけでなく、「AIに推薦してもらう」ための工夫が重要になっていくのです。

AI時代に訪れる新たな課題


これまで見てきたように、ChatGPTとAIモードはどちらも検索や情報収集の在り方を大きく変えています。では、SEO業界はこれからどんな課題に直面するのでしょうか。特に重要なポイントを整理してみます。

課題1:ゼロクリック検索の加速


GoogleのAIモードやAIによる概要が普及すると、ユーザーはAIがまとめた答えを見て満足してしまい、リンクをクリックしないケースが増えます。
これは「ゼロクリック検索」の進化版とも言えます。従来もナレッジパネルや強調スニペットによってクリック率が下がることはありましたが、AIモードでは画面全体がAIの答えで覆われるため、さらにクリック機会が減少します。
結果として、SEO担当者は「どうすればAIの回答部分に自社が取り上げられるか」という新しい発想が求められるようになります。

ナレッジパネルとは?


ナレッジパネルは、Google検索結果の右側や上部に表示される「情報ボックス」です。
企業名、人物名、観光地、映画などの固有名詞を検索すると、Wikipediaや公式サイトなどの信頼性あるデータベースをもとに、概要・画像・関連情報が整理されて表示されます。
例えば「トヨタ」と検索すると、ロゴ、設立年、CEO名、公式サイトリンクなどがまとまって表示されるのがナレッジパネルです。
これは基本的にGoogleが独自の知識グラフから自動生成しているため、Webページの一部を直接引用しているわけではありません。

《ナレッジパネルの例》



強調スニペットとは?


強調スニペットは、検索結果の一番上に表示される「回答枠」のことです。
特定の質問形式(例:「糖尿病 原因」や「富士山の高さ」など)に対して、Googleが適切と判断したWebページの一部を抜粋し、テキストや表、箇条書きで直接表示します。
引用元ページへのリンクも掲載されますが、多くのユーザーはそこで答えを得てしまうため、クリック率が下がる傾向にあります。

《強調スニペットの例》




課題2:AIに選ばれるブランドと選ばれないブランド


AIが回答を組み立てるとき、すべてのサイトが平等に扱われるわけではありません。
ChatGPTは学習データに頻繁に登場するブランドを優遇しやすく、AIモードはGoogleのランキングや信頼性を基準にごく一部のブランドだけを紹介します。
この仕組みが進むと、「AIに選ばれるブランド」と「選ばれないブランド」の格差はますます広がります。大手や有名ブランドは露出を維持できますが、中小企業や新規サイトは存在感を出すのが難しくなるのです。SEOの現場では、ブランドをAIに認知させるための新しい広報戦略や外部施策が必要になってきます。

課題3:KPIの再定義


SEOの成果を測るとき、多くの企業は「検索順位」「流入数」「コンバージョン数」をKPIとしてきました。
しかしAI時代には、検索順位がそのまま成果に結びつくとは限りません。たとえ1位を取っても、AIが答えに引用しなければユーザーに認知されないのです。
今後は「AIでの引用数」「AI回答に登場した回数」「AI経由での流入」といった新しい指標を設定し、従来のKPIと組み合わせて評価する必要があります。

課題4:AIに引用されやすいコンテンツ作り


従来のSEOでは、検索アルゴリズムを意識して記事を作れば一定の効果がありました。ですが、AI時代には「AIが理解しやすく引用しやすい文章」であることが大切になります。
たとえば次のような特徴を持つ記事はAIに取り上げられやすい傾向があります。

•明確で簡潔な説明
•信頼できる情報源からの引用
•網羅性と体系性のある構成


SEO担当者は「AIに選ばれること」を意識した新しいコンテンツ制作ルールを身につける必要があります。

課題5:生成AIコンテンツの氾濫


生成AIの普及によって、誰でも大量の記事を短時間で作れるようになりました。便利ではありますが、その結果としてインターネット上には「似たようなAI生成コンテンツ」が急増しています。

Googleは低品質なAI生成記事を評価しない方針を示していますが、実際のところAIモードでどのように扱われるかはまだ発展途上です。SEO業界としては、質より量に偏らないよう、オリジナル性や実体験を加えたコンテンツをどう作るかが課題です。

課題6:著作権と情報の透明性


AIが生成した回答には、どの情報源を参照したのかが不透明なケースが多いです。著作権の扱いもグレーゾーンであり、引用されたサイトがどれだけ利益を得られるのかははっきりしていません。

この点については業界全体でルール作りが進んでいくはずですが、SEO担当者としては「引用されるメリットを最大化する」戦略を意識する必要があります。ブランド認知や信頼性向上を狙い、たとえ直接的なクリックがなくても「AIに載る価値」を活かす姿勢が大事になります。

課題7:SEOからAEO・GEOへ


今後の方向性として注目されるのが「AEO(Answer Engine Optimization)」や「AIO(Artificial Intelligence Optimization)」、「GEO(Generative Engine Optimization)」です。
AEOは「AIに答えとして取り上げてもらうための最適化」、AIOは「生成AIや検索AIに最適化された情報設計を行う施策」、GEOは「生成AIがブランドを引用しやすくするための工夫」を指します。
これらは従来のSEOの延長線にありますが、発想は全く新しいものです。単に順位を追うのではなく、AIが答えを作るときに自社がどう登場できるかを考えるのが次の時代の課題です。


まとめ


ChatGPTとAIモードの登場によって、SEOは「順位争い」から「AIに選ばれる争い」へと変化しました。
ゼロクリック検索の加速、ブランド格差の拡大、新しいKPIの必要性、そしてAIに引用されやすいコンテンツ作り…。これらはすべてSEO業界が避けて通れない課題です。

今後はSEOに加えて、AEOやAIO、GEOのような新しい概念を取り入れながら「AI検索時代に適応する戦略」を築いていくことが求められます。

Googleの「AIモード」と「AIによる概要」の違いとは?

2025年09月08日

日々行っているSEOコンサルティングのミーティングで、最近ある大きな変化が起きています。以前までは検索順位をどう上げるか、どんなキーワードを狙うべきかといった話題が中心でした。

しかし最近は、会話の半分以上がGoogleの「AIによる概要」と「AIモード」でどうすれば自社サイトや自社ブランドを取り上げてもらえるのか、というテーマに移り変わっています。これは、ほとんどのサイト運営者にとって最大の関心事が従来のSEO順位ではなく「AIにどう選ばれるか」へとシフトしていることを物語っています。


AIによる概要とは何か?


「AIによる概要」とはGoogleが国内で2024年8月15日に検索結果ページに追加したた要約機能で、Googleが複数の信頼できる情報源を組み合わせて、ユーザーにわかりやすい形でまとめて提示する仕組みです。



例えば「風邪の初期症状を治す方法」と検索すると、これまでは医療系サイトのリンクが並ぶだけでした。ところが「AIによる概要」が導入されている場合には、ページの上部にAIが生成した説明文が現れ、その中に参考元サイトのリンクが挿入されるのです。



Google公式の開発者向けページ「AI 機能とウェブサイト」でも、この機能がどのように働くかが詳細に解説されています。AIはユーザーの検索意図を理解し、複数の情報源を比較・分析し、その結果を要点として提示します。



この仕組みによって、ユーザーは検索直後に最も知りたい情報を効率的に得ることができます。そして運営者にとっては、自社のサイトがこの概要文の参考元として選ばれるかどうかが新しい課題となります。




「AIモード」とは何か?


次に「AIモード」について見ていきましょう。「AIモード」は、従来の検索体験を大きく変える新しい仕組みです。「AIによる概要」が通常の検索結果に付け足される補助的な存在であるのに対し、「AIモード」はユーザーがスイッチを切り替えると検索画面そのものがAI中心のレイアウトに変わります。



Googleの公式サイト「Google 検索の AI モードで AI による回答を取得する」では、この「AIモード」を「新しい検索体験」と位置づけています。AIが生成する回答が画面の中心を占め、従来の検索リンクは補足的な役割にとどまります。

つまり、「AIモード」をオンにするとユーザーは青いリンクのリストを見るのではなく、AIが「これが答えです」と示した文章やブランド推薦を中心に情報を得ることになります。


「AIによる概要」と「AIモード」の違いをイメージで捉える


SEO初心者の方にとっては、「AIによる概要」と「AIモード」の違いがまだ曖昧に感じられるかもしれません。わかりやすくたとえるなら、「AIによる概要」は街の情報誌のような存在です。複数のお店やサービスの情報をまとめて紹介し、利用者に幅広い選択肢を提供します。一方で「AIモード」は、信頼できるガイドがマンツーマンでユーザーを案内するようなものです。たくさんの候補を提示するのではなく、「このお店が最適です」と少数に絞り込んでおすすめするのです。



この違いからわかるのは、「AIによる概要」では幅広いサイトに掲載されるチャンスがある一方、「AIモード」ではわずかなブランドやサービスだけが取り上げられるため、その競争ははるかに厳しいということです。


SEOにどのような影響があるのか


SEOの観点から見ると、「AIによる概要」はこれまでのSEOの延長線上にあるといえます。検索順位そのものも依然として重要ですが、Googleが「参考にすべき信頼できるサイト」と判断した場合に「AIによる概要」に引用される可能性が高くなるからです。つまり質の高いコンテンツを提供し続けることがこれまで以上に大切になります。
一方、「AIモード」は従来のSEOだけでは十分ではありません。米国のSEO専門メディア「Search Engine Journal」は記事「Research Shows How To Optimize For Google AIO And ChatGPT」の中で、「AIモード」は紹介するブランド数が少なく、その代わりに厳選された信頼性の高いブランドのみを取り上げる傾向があると分析しています。

つまり「AIモード」に取り上げられるには、単に情報を発信するだけでなく、そのブランドやサイトが他の信頼できるメディアや第三者からも高く評価されている必要があります。


今後の展望と対策


Googleの検索におけるAIの存在感は今後さらに強まっていくでしょう。「AIによる概要」で幅広いユーザーに知ってもらうことと、「AIモード」で厳選された推薦枠に入ることは、これからのサイト運営において避けて通れない課題です。SEO初心者にとっては少し難しく感じられるかもしれませんが、結局のところ求められているのは「ユーザーにとって有益で信頼できる情報を提供すること」に尽きます。
その上で、情報をどう整理し、どんな形で発信するかという工夫が今まで以上に重要になります。記事の構造をわかりやすくすることや、信頼できる外部サイトからの引用やリンクを獲得することは、AIに選ばれるための基礎的な対策です。さらにブランドとしての信頼性を高めること、権威性を示すことが「AIモード」対策の鍵になります。


まとめ


「AIによる概要」と「AIモード」は一見似ているようで実際には性質が異なり、前者は「検索結果に追加される要約」であり、後者は「検索体験そのものをAI中心に切り替える」仕組みです。SEOの世界では今、順位を上げることだけでなく、AIに引用されることや推薦されることが新しい競争の基準になっています。
今後、全日本SEO協会では、このGoogleの「AIによる概要」と「AIモード」で自社サイトや自社ブランドを取り上げてもらうためにどうすればよいのか、そのためのAEO(Answer Engine Optimization)やAIO(AI最適化)といった新しい対策技術の研究と実践に取り組んでいきます。そして、サイト運営者の皆さまと共に、この新しいAI検索時代を生き抜くためのノウハウを蓄積し、共有していきたいと考えています。


衝撃!「AIによる概要」が表示されるようになったことでサイトのアクセス数が70%以上減少《Bloomberg報道》

2025年04月09日

GoogleのAI概要導入でアクセス激減


2025年4月7日のBloomberg報道によると、Google検索結果に表示されるAI生成の概要(AIによる要約)が原因で、多くのウェブサイトが深刻なトラフィック減少に見舞われています。

例えば、DIYホームプロジェクトサイト「Charleston Crafted」では、Googleが検索結果にAIによる要約表示を導入して以降、わずか1ヶ月でサイト訪問者の約70%を失ったとされています。この急激なアクセス減少に伴い、広告収入も1年間で65%減少し、数万ドル規模の損失となったとのことです。

サイト運営者の多くは、こうした損失はGoogleのAI概要表示によるものだと非難しています。AIがウェブサイトの内容を読み取って検索結果最上部に要約を表示してしまうため、ユーザーは満足してウェブサイトをクリックしなくなり、その結果サイト側には訪問者も収益も入らなくなるためです。

実際、「素晴らしいコンテンツを作ればGoogleがトラフィックを送ってくれる」というこれまでの共存関係が崩れつつあり、サイト運営者からは「裏切られた」との声も上がっています。

Google側はこの指摘を否定し、「トラフィック減少の原因を一概にAI概要のせいと決めつけるのは誤りだ」とコメントしています。季節要因や他のアルゴリズム更新など様々な理由でアクセス数は変動し得るという主張ですが、実際に複数の業界カテゴリ(ファッション、旅行、DIY、料理など)で検索流入が減少しているデータも報告されており、多くのサイト運営者が危機感を募らせています。


「検索利用が2026年までに25%減少する」というGartnerの予測


このような状況を裏付けるかのように、調査会社Gartnerは検索エンジンの利用動向について衝撃的な予測を発表しています。それによれば「2026年までに従来型の検索エンジン利用は25%減少する」見通しだといいます。



つまり、これまでGoogle検索に費やされていたユーザーのクエリの約4分の1が、今後は別の手段に置き換わるということです。この主要因として挙げられているのがChatGPTやClaude、Bardといった生成AIチャットボットの台頭です。GartnerのアナリストであるAlan Antin氏は「生成AIツールがユーザーの質問に答える回答エンジンとなり、従来の検索クエリを置き換え始めている」と指摘しており、企業はマーケティング戦略を再考せざるを得なくなるだろうと述べています。

検索エンジン経由のオーガニック検索流入(自然検索流入)は、多くのウェブサイトにとってこれまで主要な集客チャネルでした。しかしGartnerの予測が示すように、ユーザー行動は大きく変わろうとしています。特に情報収集において、従来の検索エンジンの代わりに生成AI搭載の回答システムを使う人が増えれば、検索エンジン経由のトラフィック自体が減少し、ひいてはGoogle上でのSEOの価値も相対的に下がってしまう可能性があります。


ChatGPT・Perplexityからの流入増加


Gartnerの予測する「検索離れ」は、すでに現実のものとなり始めています。業界のトラフィックデータを見ると、ChatGPTやPerplexityといった生成AIプラットフォームからウェブサイトへの流入が急増していることが分かります。事実、直近半年で生成AI経由のウェブサイト誘導トラフィックが約130%増加したとの分析結果もあります。



例えば中小規模サイト391件を対象にした調査では、2024年秋頃にはオーガニック検索の0.5%程度だったAI由来の流入が、2025年初めには1.2%超と倍以上に拡大したという報告があります。

割合自体はまだ小さいものの、その増加ペースの速さは無視できません。Google検索からのオーガニック流入が横ばいの中で、AI経由の流入だけが急伸していることから、ユーザーが情報源としてAI回答に急速に馴染みつつある現状がうかがえます。

この傾向は大規模サイトにも表れています。海外主要ニュースサイト上位14社の合計では、ChatGPTからの月間リファラ(外部参照)訪問数が2024年8月の約43万5千件から、2025年1月には約350万件と6ヶ月で8倍以上に増えたとのデータがあります。

とはいえ、その350万という数字もこれら大手サイトの総訪問数のうち約0.1%程度に過ぎず、現時点では全体に占める割合は僅かです。しかしPerplexityなど他の生成AI検索からの流入も含めれば、ニューヨーク・タイムズに対して1月に約14.6万件、CNNに約13.9万件といった具体的な流入実績が報告されており、今後さらにAI経由トラフィックの存在感が増す可能性があります。

実際、BrightEdge社の分析ではChatGPTの検索市場シェアが2025年中にも1%を超える可能性が指摘されており、検索マーケティング関係者はこの変化を注視すべきだと言えるでしょう。

もはや従来のSEO対策だけでは不十分


以上のような流れから明らかなように、単に従来通りのSEOだけに頼っていては、サイトのトラフィックを維持することが難しくなりつつあります。たとえコンテンツの品質を高めて検索結果で上位表示できたとしても、その上部にAIによる回答や「関連質問」ボックスが表示されてユーザーの目を奪ってしまえば、クリックされない「ゼロクリック検索」の状態になりかねません。

実際Googleの検索結果ページでは、質問に直接答える生成AIの概要やFAQ形式の「他の人はこちらも質問」といった要素が増えており、従来型の青いリンク(いわゆる10件のオーガニック結果)の露出機会が相対的に減少しています。

こうした変化に対応せず放置してしまうと、どんなに優れたコンテンツであってもユーザーに実際に訪問してもらえなくなる危険があります。「検索順位=アクセス数」というこれまでの常識は崩れ始めており、従来のSEO対策だけでは十分ではないのです。 では、このような環境変化に対してサイト運営者は何をすれば良いのでしょうか。


【解決策1】 AEO(Answer Engine Optimization)への対応


一つ目の解決策はAEO(Answer Engine Optimization、回答エンジン最適化)の実践です。AEOとは、簡単に言えば「AIや音声アシスタントによる回答エンジンに自分のコンテンツを採用・引用してもらうための最適化」のことです。



ChatGPTやGoogleのAI概要、音声アシスタント(SiriやAlexa等)はユーザーの質問に対し即座に答えを提供しますが、その際に外部サイトへの訪問を伴わないケースが増えています。

つまり、ユーザーはAIから得られた答えだけで満足し、あなたのサイトには訪問しないまま終わってしまうのです。 AEOでは、このようなAIによる直接回答の中に自分のコンテンツを組み込んでもらう(もしくは情報ソースとして参照してもらう)ことを目指します。具体的なポイントは以下のとおりです。

ユーザーの質問に対する明確な回答をコンテンツ中に用意する


記事内でよくある質問を見出し(H2タグやH3タグ)にしてQ&A形式で回答を書くなど、AIが抜き出しやすい形で情報提供します。特に冒頭数行で質問に端的に答える部分を作っておくと、AIによる概要や関連する質問、あるいは四角い枠に囲われて検索1位に表示される強調スニペットに採用されやすくなります。

構造化データの活用


FAQページであればFAQ構造化マークアップ、HowTo記事なら手順のSchema(スキーマ)マークアップを施すことで、検索エンジンやAIにコンテンツ構造を正しく伝えます。これにより、AIが回答を抽出しやすくなり、引用される可能性が高まります。

E-E-A-Tの担保


AIが信頼できる情報源として引用するには、コンテンツの信頼性が重要です。専門家の著者クレデンシャルを明記したり、出典を示すなどして、いわゆるE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信用)を高めましょう。信頼性の高いコンテンツほどAIによる参照対象として選ばれやすくなります。

ページの表示速度やモバイル最適化


これは従来のSEOと共通しますが、技術的な最適化も大切です。特に将来的にAIクローラーが直接サイトを巡回する場合でも、読み込みが速く構造がしっかりしたページであるほど有利になると考えられます。

ポイントは、検索エンジンに評価されるのみならずAIにとっても理解しやすいコンテンツを作ることです。

これにより、仮にユーザーが検索結果でAIの要約だけ見て終わったとしても、その要約部分に自サイトの情報や名前が表示される可能性が高まります。結果として直接のクリックが得られなくともブランド露出にはつながりますし、AIによっては参考リンクとしてサイトURLが表示され、そこから一定の誘導が見込めるケースもあります。


【解決策2】 未対応のキーワードをテーマにしたページを新規作成する


2つ目の対応策としておすすめなのが、これまで対策してこなかった未対応のキーワードをテーマにしたページを新しく作成するという方法です。

たとえば、歯科医院のウェブサイトで「矯正歯科」に関するページだけを中心にSEO対策していた場合、AI概要などの影響でそのキーワードからの流入が落ちてしまうとサイト全体のアクセスに大きなダメージを受けることになります。こうしたときに有効なのが、「虫歯治療」「歯周病治療」「予防歯科」といったこれまであまり取り組んでこなかった別のキーワードをテーマにしたページを追加することです。

このような新規キーワードを探すには、たとえばkeywordtool.ioなどのキーワードサジェストツールを使うと便利です。自社サイトに足りないキーワードや、まだ競合が少ないニッチなテーマを見つけて、それに合わせて新しい記事やコンテンツを作っていくことができます。
《参考サイト》 Keyword Tool

また、Googleサーチコンソールの「検索パフォーマンス」機能も活用できます。現在自社サイトに流入しているキーワードが確認できるので、そこに出ていないキーワードは「まだ対応していない可能性があるキーワード」ということになります。それらをリストアップして、新たなトピックとしてページを作成していくことで、検索からの新規流入を獲得できるようになります。



このようにしてキーワードの裾野を広げていくことで、検索経由のアクセス数が1テーマに偏っているリスクを減らすことができ、結果としてトラフィックの安定化につながります。


【解決策3】流入元の多様化(SNS・YouTube 等)


二つ目の解決策は、集客チャネルをGoogle検索以外にも広げることです。従来のSEOでは「まずGoogle検索ありき」で戦略を立てがちでしたが、前述のとおりGoogleからの流入は予期せぬ要因で大きく変動し得ます。そこで、SNSやYouTubeなど他のプラットフォームからの流入を積極的に取り込むことで、リスク分散と新たなオーディエンス獲得を図ります。 具体的には次のような施策が効果的です。



SNSでの情報発信とコミュニティ作り


X(旧Twitter)やFacebook、Instagramなどで記事の内容を発信し、フォロワーによるエンゲージメントを高めます。記事更新のたびにSNSで告知するのはもちろん、内容に関連する豆知識や舞台裏など付加情報も投稿するとユーザーの関心を引き続けられます。SNS上でファンコミュニティができれば、検索エンジンに頼らずとも継続的な流入元となってくれはずです。

YouTubeなど動画プラットフォームの活用


ブログ記事の内容を動画に再構成してYouTubeに投稿するのも有効です。YouTubeは世界第2位の検索エンジンとも言われ、動画で情報収集するユーザー層も非常に多いです。記事内容を解説する動画や関連するノウハウ動画を作成し、動画の説明欄から自サイトへ誘導することで、新たな経路からのアクセスを獲得できます。

特にYouTube上で影響力がつけば、Google検索アルゴリズムの変動やAI要約の有無に関わらず、安定した集客が見込めます。



メールマガジンやその他プラットフォームの活用


可能であればメールニュースレターの購読者を集めておき、直接サイトに再訪してもらう仕組みを作るのも良いでしょう。また、日本国内向けであればLINE公式アカウントで記事配信したり、専門分野によってはnoteやQiitaといったプラットフォームで情報発信することも考えられます。要は「ユーザー自らサイトに来てくれる経路」を増やすことが重要です。



このように複数のチャネルで発信することで、仮にGoogle検索からの流入が減少しても他から補える体制を構築できます。特にSNSやYouTubeでファンを増やしておけば、検索結果で自サイトが直接クリックされなくとも、「この前SNSで見たサイトだ」と認知してもらえるようになり、中長期的にはブランド力・ドメインパワーの向上にもつながるはずです。


SEOコンサルティング現場での観察


私はSEOコンサルタントとして複数のクライアントサイトを支援していますが、「AIによる概要」や「関連する質問」がGoogleの検索結果の上位に表示されたことにより、Google検索からのトラフィックが約30%前後落ち込んだケースを実際にいくつも目にしています。

特に2024年以降、検索結果画面の上部にAI生成の回答が表示されるようになってから、その下に位置する通常の検索結果のクリック率が軒並み下がってしまったのです。「検索順位は以前と変わらないのにアクセスだけ激減した」という現象が多発し、従来のSEO手法の限界を痛感させられました。

しかしながら、こうした中でも早い段階から今回紹介したようなAEO対策としてのコンテンツ見直しと集客チャネルの多様化に取り組んだクライアントのサイトでは、アクセス数の下げ止まりに成功したケースや微増を達成しているケースもあります。

例えばある教育系メディアサイトでは、「AIによる概要」に抜粋されやすいようQ&A形式で記事を再編成したうえでショート動画をYouTube、TikTok、Instagram、X、Facebookにも投稿し始めた結果、検索経由の減少分の50%以上の新規訪問者を獲得できました。

無論、すべてのケースで劇的な成果が出るわけではありませんが、少なくとも私の現場感覚として「手をこまねいて何もしない」より「新しい環境に適応するための工夫を凝らす」方が遥かに良い結果を生むことは間違いありません。AIに情報を奪われて嘆くだけでなく、どうすればAIと共存共栄できるかを前向きに模索したサイトほど、安定したトラフィックを維持できている印象です。


まとめ


2025年現在、SEOの世界は大きな転換期を迎えています。Bloombergの報道が示すように、検索結果へのAI概要の導入はサイト運営にとって無視できない脅威となりました。さらにGartnerの予測にもある通り、ユーザーの情報探索行動自体が検索エンジンから離れ始めています。

こうした状況下で従来型のSEO手法に固執しているだけでは、残念ながらサイトのアクセス数維持は難しいでしょう。 しかし裏を返せば、今回解説したAEOの実践やマルチチャネル展開によって十分に対抗策を講じることが可能です。

AIが台頭する時代でも、コンテンツをしっかり最適化していればAI回答の素材として選ばれるチャンスがありますし、検索エンジン以外の場でファンを獲得しておけば一極集中のリスクも軽減できます。これからSEOを始める方は是非、「SEO(検索エンジン最適化)+ AEO(回答エンジン最適化)」の両輪で考えるという新しい発想を持ってみてください。

従来の検索順位だけを見るのではなく、いかに自分のコンテンツがユーザーの疑問に直接答え、様々なプラットフォームで価値を発揮できるか、その総合力が問われる時代です。 変化はチャンスと捉えて柔軟に戦略をアップデートし、AI時代の波に乗ってサイトの成長を実現しましょう!

検索はもうGoogleだけじゃない!Googleの利用率低下と多様化する検索行動に中小企業はどう対応すべきか?

2025年04月04日

かつて私たちは、何かを調べたいときには「とりあえずGoogleで検索する」のが当たり前でした。しかし、ここ数年でその常識は静かに、しかし確実に変わりつつあります。2018年のコアアップデート以降、Googleの検索結果には大企業や政府機関、大学など権威ある情報ばかりが並ぶようになり、個人や中小企業の声は埋もれがちに。消費者は「本音」や「人気」「体験談」などを知るために、X(旧Twitter)やInstagram、YouTube、Amazonといった他のプラットフォームを使い分けるようになっています。

こうした検索行動の多様化は、集客に悩む中小企業や個人事業主にとって、大きなチャンスでもあり、見直すべき課題でもあります。本記事では、なぜGoogleの利用傾向が変わったのか、消費者がどのように情報を探すようになっているのかを解説しながら、これからの時代に合った「脱Google依存」のマーケティング戦略を提案します。


Google検索では権威あるサイトが優遇されるようになった


2018年前後のGoogleコアアップデート(検索アルゴリズムの大幅変更)以降、検索結果の上位表示にはサイトの権威性が非常に重要になりました。具体的には、大企業・政府機関・大学など「信頼性の高い公式サイト」が優先的に表示される傾向が強まったのです。反対に、個人ブログや中小企業、アフィリエイトサイトといった小規模サイトは、以前より上位表示されにくくなりました。

例えば健康や医療に関する検索では、2017年の日本向けアルゴリズム変更(いわゆる「医療アップデート」)以来、公的機関や医療専門家のサイトが最上位に出るようになっています。

これは過去に誤った医療情報が出回った事件(WELQ問題)を受け、Googleが信頼性を重視した結果です。同様に金融や法律など生活に重大な影響を与えるテーマ(Googleの呼ぶ「YMYL領域」)でも、「誰が書いたか不明な個人の意見より、公的で正確な情報」が優遇されています。
《関連情報》 YMYLとは?

実際、「糖尿病」など真剣なテーマを検索すると、病院や行政のページが上位に来て、匿名の個人ブログはまず出てきません。

Googleがこうした方針に舵を切った背景には、ネット上のフェイク情報対策があります。信頼度の低い掲示板投稿や体験談が上位に来て、ユーザーが間違った情報を鵜呑みにすると大きな危険があります。そこでアルゴリズムで経験・専門性・権威性・信用(E-E-A-T)の高いサイトを評価し、ユーザーには「正確で信頼できる情報」を提供しようとしているのです。

《関連情報》 E-E-A-Tとは何か?

この結果、2ちゃんねるのスレッドまとめやAmebaブログ、ライブドアブログなど一般人の体験談は検索上位に現れにくくなりました。Googleは良質な情報を優先するあまり、玉石混交だった個人発信の情報はフィルタリングされるようになったと言えます。

YMYLの領域では個人ブログが上位表示しにくい仕組みになっており、信頼できる運営者のサイトしか上位に表示されなくなっています。たとえば検索結果で誰か分からない人の記事が上位だと、読者が誤って命に関わる判断をするリスクがあります。そのためGoogleは病院や公的機関のページを優先的に上位表示するようにしているのです。


検索アルゴリズムの変化が消費者の行動に与えた影響


このようにGoogle検索が公式情報中心になったことで、日本の消費者の情報収集行動にも変化が見られるようになりました。ユーザーは目的に応じて使い分けをするようになっています。

ユーザーはネットで情報収集しようとする時に次のように複数のプラットフォームを使い分けていると思われます。

1. 公式で正確な情報はGoogleで検索する


まず、公的機関の発表や大手企業の公式発表など「信頼性重視の情報」を得たいとき、人々は引き続きGoogleを使います。Google検索結果は権威ある情報源が中心なので、「事実関係を確認したい」「公式の数字を知りたい」場合に適しているからです。

ただし公式情報は一般に内容が固く情報量も限られがちです。必要最低限のことしか書いていないケースも多いため、「もっと具体的な口コミが知りたい」と感じる人もいます。

2. 生の声や流行を知りたいときはX(旧Twitter)やInstagramを活用


他の消費者の体験談やクチコミ、今まさに広まっている流行情報を探す際、若者を中心にSNSで検索する行動が増えています。Googleでは公式情報ばかり出てくるため、「リアルな本音」を知りたいユーザーはXやInstagram上でハッシュタグ検索やキーワード検索を行います。SNS上にはユーザー自身が発信する率直な感想や経験談が溢れており、リアルタイムな話題や口コミをつかみやすいのが利点です。

以前見たYouTube動画である女性が「Googleは企業の情報ばかりが表示される。企業によって情報操作されているのでほとんど使わない」と言っていたのを聞いて驚いたことがありますが、それから数年経って私もその意味がやっとわかる気がします。

特に10〜20代の若年層では、何か調べ物をする際にいきなりInstagramで検索を始める人も少なくありません。インスタ世代にとっては、「ハッシュタグで同じ趣味嗜好の人の投稿を見る」「フォロワーが多い人のお薦めを信頼する」といった行動が自然になっています。要するに、「みんなの評価や人気」を知りたい時にはGoogleよりSNSが頼られているのです。

Instagramには画像やテキストを投稿するだけのフィード投稿の他に、TikTokの縦長ショート動画の人気を受けてリール動画がたくさん投稿されているのでYouTubeに行かなくとも動画が見れます。また、アプリの画面下にある「発見タブ」を押して、画面右上の「地図アイコン」を押すと地図検索ができるようになっているのでGoogleマップを使う必要すらありません。

DM機能を使えばGmailやLINEを使わなくとも人とコミュニケーションが出来ます。Instagramのアプリを使えば他のプラットフォームを使わなくても生活ができるといっても良いほどユーザーの囲い込みがされています。

3. 商品の購入検討ではAmazonや楽天市場で検索


欲しい商品があるとき、多くの消費者は最初から通販サイト内で検索して口コミレビューや価格を比較するようになりました。実際、ある調査では「オンラインで商品を探す人の58%が最初にAmazonで検索を開始する」というデータもあります。

Googleで商品名を検索するより、Amazonや楽天市場で商品のレビュー評価や写真、価格帯を一度に確認できるためです。とくにAmazonはレビュー件数が多く信頼性の指標になりやすいことから、「とりあえずAmazonで評判チェック」という行動が一般化しています。楽天市場でも複数店舗の価格やポイント還元率を横断比較できるため、価格比較には通販サイトが便利です。

こうした傾向から、メーカー公式サイトよりも先にAmazonの商品ページを見る消費者も増えています。Google検索が公式情報中心になった分、商品の生の評価は通販サイト上で探すのが手っ取り早いと認識されているのです。

4. 学習や趣味の習得にはYouTubeを活用


医療・健康の解説、金融知識、ITの使い方、旅行先の情報、日常生活のコツなど、「何かを学びたい/知りたい」ときにYouTubeを使う人が非常に増えました。YouTube上には専門家による解説動画から一般ユーザーのノウハウ紹介まで幅広いコンテンツがあり、動画で視覚的に理解できるため初心者にも分かりやすいからです。

実際、中高生の約8割が勉強にYouTubeを利用しているとの調査もありますし、新社会人を対象とした調査でも半数近くが「お金(金融知識)」の勉強にYouTubeを活用していると報告されています。

特にお金やビジネス、語学といった分野は若年層に人気で、新人社員の45%がマネー関連のYouTubeチャンネルで学習し、30%がビジネススキル習得の動画を見ているという結果もあります。医療・健康情報についても、お医者さんが解説する健康チャンネルや、実際に病気を経験した人が語る動画などが多数再生されています。

旅行や料理など生活全般のテーマでも「百聞は一見に如かず」で、文章より動画で手順を見る方が理解しやすいため、多くの人がまずYouTubeで検索する時代になっています。

このように、Google検索だけでは得られない「他の人の声」や「具体的なイメージ」を補うために、SNS・通販サイト・動画プラットフォームがそれぞれ活用されるようになりました。特に若い世代は検索=Googleとは限らないという新常識が定着しつつあります。

こうした消費者行動の多様化は、「Googleで見つからない情報は他で探す」という合理的な適応と言えるでしょう。Google検索が公式情報中心になった副作用として、ユーザーは目的別に情報源を選ぶスキルを身につけ始めたのです。


中小企業・個人事業主は「脱Google依存」で情報発信を強化すべき


このような検索環境の変化に対応するため、日本の中小企業や個人事業主にとって重要なのはGoogleだけに集客を頼らない戦略です。従来はSEO(検索エンジン最適化)で自社サイトを上位表示させることが集客の王道でした。しかしこれまで説明してきたように、Googleのアルゴリズム変更によって小規模サイトは不利になりがちです。たとえ役立つ情報を発信していても、検索順位の変動一つでアクセス激減というリスクがあります。

実際に「ある日突然、検索からサイトが消えてしまいアクセスの大半を失った」という事例も多数報告されています。私はSEOコンサルタントですが、コンサルティング契約の動機の多くが検索順位変動によるサイトのアクセス減です。Googleに依存しすぎるとビジネス継続が危うくなる可能性があるのです。

そこで求められるのが情報発信チャネルの多様化(リスク分散)です。具体的には、Google検索経由の流入だけでなく:

1. SNSでの発信・コミュニティ形成


XやInstagram、Facebookなどで役立つ情報や顧客との交流を行い、直接ファンを増やす。
特にTwitterやInstagramは拡散力があり、共感を呼ぶ投稿をすれば自社サイトを経由せずとも商品・サービスの認知を広げられます。SNS上に濃い繋がりを作っておけば、検索順位に左右されない安定したファン基盤になります。

2. YouTubeやTikTokでの動画コンテンツ


商品の使い方紹介や専門知識の解説など、動画ならではの情報発信でユーザーの興味を引く。検索だけでなくYouTube内検索からの流入や、関連動画から自社を知ってもらうチャンスが生まれます。最近はTikTokやInstagramリールで短い動画情報を探す若者も多いため、そうしたプラットフォームで存在感を出すことも有効です。

3. Amazonや楽天への情報掲載・活用


自社商品がある場合、公式サイトだけでなくAmazonや楽天の商品ページを充実させる。詳しい説明や高品質な画像、丁寧なレビュー対応を行い、ECモール内検索で選ばれる工夫をする。ユーザーは最初からモールで検索するケースが多いので、そこをおろそかにしないことが重要です。

4. メールマガジンやLINE公式アカウント


一度接点を持った顧客には、メールやLINEで定期的に情報提供する仕組みを作ることで、プッシュ型で再来訪を促進できます。検索エンジンに頼らずとも自社から直接情報を届けられるチャネルを持つことで、Googleの影響に左右されにくくなります。

これら複数のプラットフォームを組み合わせれば、仮に「Googleからの集客が落ちても大丈夫」と言える状態に近づけます。重要なのは、自社の持つ情報をユーザーが求める場所・形態で提供することです。検索エンジン経由だけでなく、SNSや動画、EC、直接発信などマルチチャネル戦略をとることで、リーチできるユーザー層も広がります。

また、Google検索向けの施策自体も質が求められます。権威性・信頼性が重視される以上、自社サイトには専門家の監修を入れたり、実績や資格を明記したりして信頼性をアピールすることが欠かせません。

中小企業でも、自社の強み領域についてはオウンドメディアで専門的で正確な記事を出すなど、権威を高める工夫が必要です。それと並行して上記のような他チャネルも育て、「公式情報も発信しつつ、ユーザー目線の声も拾える企業」として存在感を高めていくことが求められます。


まとめ


2018年頃からのGoogle検索アルゴリズム変更により、「公式情報 vs 個人の声」という構図で検索結果が様変わりしました。Googleはフェイクニュース対策やユーザー保護の観点から権威ある情報源を優遇し、その結果として中小企業・個人発信の情報が埋もれやすくなっています。その一方で、ユーザーは知りたい内容に応じてSNS・動画・ECサイトを使い分けるようになり、検索行動は多元化しました。

こうした状況下で、中小企業や個人事業主が情報発信で成功するには「脱Google依存」の発想が不可欠です。Googleだけを頼みにせず、SNSでファンとの関係を築き、動画で魅力を伝え、ECでレビューを充実させ、直接アプローチできる仕組みを持つ。このように複数のプラットフォームを活用して発信・集客する戦略が今後ますます重要になるでしょう。

要は、ユーザーの行動変化を理解し、自社も対応を進化させることです。公式的な正確さと、ユーザー目線の親しみやすさの両面を備え、どの経路から調べても自社にたどり着けるような情報発信を心がけましょう。Google検索の上位に自分たちのサイトがなくても、別の場所でユーザーとしっかり出会える企業がこれからの時代に強いと言えます。検索環境の変化を逆手にとって、賢く発信チャネルを広げていき集客力の最大化を目指しましょう。
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一般社団法人 全日本SEO協会 代表理事

 鈴木将司

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